自然の造形美生かし 流木でインスタレーション 奥多摩せせらぎの里美術館で

鈴木さん1 流木を使ったインスタレーション「海からの手紙 森からの手紙 鈴木斉展」が来月12日まで奥多摩町立せせらぎの里美術館(奥多摩町川井)で開かれている。流木特有のなめらかな質感や独特の曲線など、個性的な形をそのまま生かした幻想的でユニークな作品が空間を彩る。
作者の鈴木さん(65、あきる野市五日市)は、写真家の星野道夫さんの著書『旅をする木』に出会ったのを機に流木の魅力にとりつかれた。以来20年近く、富津岬(千葉)や沼津(静岡)、上越(新潟)方面の砂浜を訪ねて流木を拾い、制作を続けている。2010年に中学校の美術科教員を早期退職後、山梨県北杜市にアトリエを構え、「海で拾い、森で制作する」生活を楽しんでいる。
鈴木さんが感じる流木の魅力は、まずまろやかであること。流木は浜に流れ着いた時点ですでに自然によって造形されており、唯一無二の美しさがある。何を拾い、何を手放すのか、一心に流木を拾うことで美意識が磨かれ、価値観が明確になってくる。拾う行為自体がアートであり、自分を見つめる大切な作業でもあるという。
次に、一つひとつの流木にドラマが感じられること。森で育った木が川を経て海に出て…流木として自分と出会うまでにどんな旅をしてきたのか、想像するのがたまらなく刺激的だという。
流木にドリルで穴を開けると、ふわっと木の香が立つ。それまで樹種の判別のつかなかった木の正体が初めてわかった時などに創作の喜びを感じる。
「私の何倍もの時間旅をしてきた漂流者のような流木を崇める感覚。作品にすることで新たな息吹を吹き込むというとおこがましいが、何とか流木と関わりたいとの思いで制作してきた」と鈴木さん。「旅する流木のドラマに想いを馳せながら見ていただけたらうれしい」と話している。
開館時間は午前10時~午後5時(最終日3時まで)。月曜休館。入館料大人300円、小中学生200円。問い合わせは0428(85)1109まで。(伊藤)