細谷火工 あきる野市 世の中の役に立つモノ作りを 花火技術を原点に 訓練や救難・救命用などの火工品を製造

細谷火工集合写真 ドライバーで打つと球筋に沿って色煙が舞うレインボースモークゴルフボール、火薬の破裂音で航空機への鳥の衝突を防ぐバードクラッカー、多量の煙で遭難者の位置を知らせ、水中携行可能なダイバーマーカSOS……。いずれも細谷火工(あきる野市菅生、細谷穣志社長)が長年培った技術をもとに開発した火工品だ。
同社は火薬・爆薬を組み込んだ製品(火工品)の製造を主に行う会社。発煙筒や信号弾など訓練、救命・救難装備に用いる防衛省向けの製品が売上の8割を占める。冒頭の民間向け製品はまだ認知度が低いというが、アイテムを増やし徐々に売上を伸ばしている。
本社を置く菅生工場と草花工場あわせて9万坪を超す敷地に約30棟の火薬庫と試験施設を持つ。2007年に硝酸ヒドロキシルアミンと硝酸ヒドラジン(危険物第5類)の製造施設を建設し、化成品事業にも力を入れている。その技術を活用して宇宙開発分野にも挑戦。硝酸ヒドロキシルアミンを用いて同社が開発した低毒性液体推進薬が、このほど小型人工衛星の実証実験用燃料として採用され、宇宙空間で実験中だ。
創業は明治39(1906)年。「藤棚 細谷煙火店」として打ち揚げ花火の製造販売を開始した。先代の細谷政夫さん(現社長祖父)はパラシュート花火やクリスマスクラッカーといった世の中に存在しない製品を発明。太平洋戦争中は陸軍の監督工場として照明弾や信号弾などを製造した。
戦後、花火の製造を復活。平成2(1990)年に花火部門をホソヤエンタープライズに移譲し、細谷火工は火工品の製造に特化した会社になった。
不屈の開発精神をもち、より多くの人の役に立つモノ作りを社訓に掲げる。「こんな製品があったら」というユーザーの声を製品開発に役立てる。直近では消防関連機関からの依頼に応じて、無害で黒い煙の出る発煙筒を作った。火事現場の煙は黒いため、より実践に近づけた訓練に使われるという。
「国家社会のお役に立つという精神で、『あの製品を使ってよかった』と言われるモノ作りをしていく」と細谷社長(60)。一方で従業員にも「勤めてよかった」と言われる会社をめざす。
「男女公平」の思いで従業員に接し、待遇面でも性別による差をつけないという。そのためか女性従業員が多く、しかも生き生きと働く姿が印象的だった。(伊藤)