江戸時代醸造の「八重菊」を復刻 小川の農業者と石川酒造 地域の伝統・文化を土台に展開
あきる野市小川の農業者と福生市熊川の石川酒造(石川彌八郎社長)が小川の水田で収穫した米で酒造りに乗り出す。12日夜、同酒造に関係者が集まり、どのような酒になるかイメージを確認した。
原料の米にこだわり、地元で栽培した米から酒を造る取り組みが全国的に広がっている。「一貫づくり」や「自耕自醸」と呼ばれるもので、「飲み手が求める酒」を模索し、地産地消、地域おこしになっている。
同市小川は清水が豊富で、昔から稲作が盛んだった。明治時代には西多摩地域の1・5割の水田が小川に集積していたとの記録もあり、江戸時代の元禄年代には森田酒造が「八重菊」を醸造していた。
今も秋川を臨む久保前には豊かな水田が広がり、複数の農家が主にコシヒカリを生産。多くが自家消費される中、消費拡大は稲作を守る上で課題となっている。
このプロジェクトは、森田酒造から蔵を借りて創業し、多摩川を挟んで位置する石川酒造が、小川の米を使って地域の日本酒文化を発信できると考えた。また昔は西多摩屈指の歓楽街だった同市二宮で相当量の酒が消費されてきた歴史を踏まえ、取り組むもの。
当日は森田康大さん(49)ら農業者と、石川彌八郎社長(55)ら同酒造関係者のほか、商品化後の販路を考え、二宮商栄会員にも参加してもらい、計20人ほどが集まった。
同酒造の小池貴宏営業部長(39)の案内で酒蔵や資料館を見学。試飲を行い、造り出す酒に思いを馳せた。同酒造からは精米歩合を70%にし、料理に合う食中酒にしてはどうかとの提案があった。
森田さんは「以前からあきる野産のうるち米を使った酒造りを考えてきた。豊田ビール復刻の実績を持つ、石川酒造と農業者の皆さんの協力をもらい、プロジェクトがスタートできた。田植えも終わり、苗は順調に育ち始めている」とし、「酒造りに米を使えば、稲作が継がれ、水田が残り、景観が守られる。外国人を中心に東京産志向が強まる中、あきる野発の東京地酒によりインバウンド効果も期待でき、地域活性化につながる」と夢を語った。
石川社長は「石川酒造は1863年の創業だが、初めの20年近くは森田酒造の『八重菊』にちなみ『八重桜』の名で売り出していた。森田さんとは従兄の関係もあり、この話をもらった時には手を叩いて乗りました」と前向きな思いを伝えた。
話し合いでは、コシヒカリを使った純米酒として「八重菊」を復刻することで一致。2000㌔の米を使い、醸造量は3000㍑、4合瓶で4200本生産する予定。今冬に仕込み、来春に生酒として売り出す。価格は1500円(税別)を見込む。地元の二宮商栄会を含め、市内のお店などで扱ってもらえるよう取り組んでいく。(岡村)