人気居酒屋「膳と宴」の取り組み テイクアウト、宅配、弁当… お金の消毒を徹底
新型コロナによる外出自粛や営業時間の短縮で売上が落ち込む飲食業界。そんな中、テイクアウト、宅配、弁当、酒の販売など新たなサービスを次々取り入れ難局を乗り越えようとする店がある。秋川駅前の居酒屋「膳と宴」(杉渕義明店長)。コロナ終息後の来店を心待ちにする客の声援が杉渕さん(51)を奮い立たせる。(伊藤)
「膳と宴」は昨年2月に開店した新しい店。手作りの料理と杉渕さんの気さくな人柄が口コミで客を呼び、たちまち平日でも席が埋まる人気店になった。
順風満帆の店に新型コロナが立ちはだかる。2月末からの外出自粛で客は激減。3月までは店の経営を案じて来てくれる常連客もいたが、緊急事態宣言後は都の要請に応じて時短営業にしたため店で飲む客はほぼいない。売上は前年の4分の1以下に減った。
そこで始めたのが、お金の消毒。飲食チェーンで店舗の衛生を保つ部署にいた経験が生きた。感染症を予防するには人が触れる部分を徹底して消毒するのが鉄則だ。硬貨は殺菌効果のある次亜塩素酸水につけ、紙幣も拭き取り消毒したものを使うようにした。
その上でテイクアウトと配達を開始。もともと店の経営が落ち着いたら近隣の年配者や独居者向けに始めようと思っていたサービスだ。「出前はちょっと前までは需要が少なかったが、今後見直されると思う。これまで利用のなかった人に店や料理を知ってもらうきっかけにもしたい」とコロナ終息後を見据える。
現状は店の周辺エリアとSNSでつながる客に限定し、杉渕さんが一人で配達しているが、国・都の給付金か融資のどちらかが入金されたらバイクを購入し、従業員も含めた配達体制を作っていくという。
22日からは弁当の販売を開始。国のコロナ対策で、店で扱う酒のテイクアウト販売が可能になる期間限定の免許も取得した。
「ライバル店に負けたというならまだしも、コロナで店がつぶれたというのは納得がいかない」と杉渕さん。「給付金、融資も活用し、やれることは何でもやって、あがき続けて乗り切りたい」。
そんな杉渕さんを支えるのが、SNSなどで客から届くメッセージ。コロナ終息後の来店を誓う内容や、事前にボトルキープして店を応援したいといったものが多い。その言葉に客の顔を思い浮かべ、踏ん張る日々だ。