河辺駅 天ぷらかわ清 開店10周年 客と作る居心地よい店 手をかけた味が評判
「会話も食事の一つ。何を食べるかよりも誰と食べるか」。青梅市師岡町で店を構え、今年で10年目となる天ぷらかわ清。カウンター7席、座敷8席の小ぢんまりとした店を一人で切り盛りする川島清次店主(48)はそう話す。揚げたての天ぷらと手をかけた料理を振る舞いつつ客との会話を楽しむ。隣に居合わせた客同士もその場を楽しみながら、居心地の良い空間を共に作ってきた。
神奈川県出身。中学卒業後から料理人の道に入り、19歳からは大阪・難波の割烹料理店で修業した。阪神淡路大震災をきっかけに神奈川県に戻り、数軒の和食料理店で腕を磨いた。結婚を機に29歳で青梅へ転居。10年ほど介護食を作る仕事も経験した。
この道に入った当初から思い描いてきた「いつか自分の店を」という思いは、2010年7月、39歳で実を結ぶ。「唯一こだわっていることといったら、すべてに手をかけること。出来合いのものは使わない」。市場での食材探しから始まり、一品料理はもちろん、刺身に添える造り醤油もすべて手作り。「自分の味にしなくちゃ、自分がやる意味がないでしょ」とにこやかに話す。
開店1年足らずで東日本大震災に見舞われる苦節の時期もありながら、ほぼ口コミだけで10年という歳月を刻んできた。「毎年3月にひな祭り会をやったり、常連のお客さんたちとバス旅行に行ったり」。第二の家族のような関係を大切に育ててきた。
ただ今年は、新型コロナの影響でひな祭り会は開店以来、初めて中止に。店舗営業は自粛し、4月末からはテイクアウトのみとした。緊急事態宣言が終わり、席数を減らすなどできる限りの感染防止対策をしながら店舗営業を再開した。「居心地の良さと手をかけた料理。それをやめたら何も残らない。中身を大事にしながら、新しい形を考えて、作っていくしかないかなと思っています」。
営業時間は12時~14時(ラストオーダー13時半)、17時~22時(同21時)。木曜定休。問い合わせは0428(21)1122まで。(佐々木)