コロナ禍異例の夏で西多摩観光地は大混雑 渋滞、駐車場、ゴミ…観光課題鮮明に

混雑する秋川橋河川公園の様子。駐車場は満車、河原には隙間なくテントが立ち並ぶ。川遊びをする人はまだ少ないが、午後には川もいっぱいに(15日正午撮影)

新型コロナの感染拡大で都民の都外への移動が制限された今年の夏は、首都圏からかつてないほどの人が西多摩に押し寄せた。多くの人が盆休みだった8日~16日をピークに西多摩の中でも特に自然豊かな青梅、あきる野、奥多摩、檜原などの地域では道路は大渋滞、川やキャンプ場、観光スポットは人で溢れた。(伊藤)

奥多摩町最大の観光スポット日原鍾乳洞には8日~16日の9日間平均で1日当たり約2000人が訪れた。観光客の車で日原街道は大渋滞。運転に不慣れなレンタカーが立ち往生して警察が出動したり、住民の生活に欠かせないホームヘルパーや診療所の往診車両が日原地区に入れなかったりする事態が発生した。

例年、盆休みが過ぎれば観光客の数も落ち着くという。だが、17日以降も来場者数が減らなかったため、鍾乳洞を運営する「日原保勝会」(黒澤庄悟会長)は入場制限を決行。鍾乳洞の約7㌔手前の大沢集落で通行車に行き先を確認し、約100台ある鍾乳洞の駐車場が満車になった時点で引き返してもらうよう要請した。それでも18日は900人、19日は1100人を記録した。

都心方面に向かう車で渋滞する奥多摩駅前(8月9日14時30分、奥多摩町役場屋上から撮影)

時はコロナ禍。例年以上の観光客が長い期間、奥多摩に集中することについて、コロナ対策にあたる総務課危機管理担当主管の大串清文さんは複雑な心境を明かす。「『観光立国』を掲げる町としては、たくさんの方に来ていただけるのはありがたいが、一方で、町の高齢者率は50%を超えており、万が一、町内で感染者が出た場合は町独自で来町自粛要請を出さざるを得ない」

9月には4連休も控えている。町内には鍾乳洞だけでなく釣場やキャンプ場もあり、盆休みのような混雑が予想される。

武蔵五日市駅から徒歩5分の秋川橋河川公園バーベキューランドは、盆休みをピークに未だ混雑が続いている。ピーク期は開園前の早朝5時、6時台から他地域ナンバーの車が列を作り、駐車場は早々に満車となった。

夕刻、観光客が去った河原は、空き缶や空きペットボトル、プラスチック容器や食べ残した食材、サンダルなどのゴミが散乱した状態。連日、閉園後にゴミを拾うスタッフの姿が目立った。ポイ捨てゴミは公園外の河原でも問題に。同市観光協会青年部が早朝ゴミ拾いをするなど対処しているが、

ポイ捨て行為はなくならない。いつもの年なら、ゴミを見かけたら拾うという地元住民も「誰が口をつけたかわからないゴミを拾って、万が一コロナに感染したら…」と躊躇する。

道路の渋滞、駐車場不足、ゴミ問題…これまでにもあった西多摩の観光課題がコロナ禍でより鮮明になった。

新型コロナが収束すれば、これ以上の混雑はもうないかもしれない。だが、国の「GoToトラベルキャンペーン」で東京が対象外にされたことや小池都知事が都外への移動自粛要請をした影響で「都内の移動ならいいだろう」と思わせる風潮が生まれた。当面は、都心部などから大勢の人が西多摩を訪れる。

国や都のコロナ対策の是非を問う議論は別にして、行政、観光業者は地元住民を巻き込み、本腰を入れて課題に取り組む時期かもしれない。