自家培養天然酵母パン「まんまるぱん」 あきる野市野辺 柳村彩夏さん 

定番メニューのカンパ―ニュと天然酵母

「パン屋で世界平和を目指している」と話すのは、あきる野市野辺の自宅で自家培養天然酵母パン「まんまるぱん」を営む柳村彩夏さん(44)。昨年6月20日にオープン。毎週木曜のみ営業し、このほど1周年を迎えた。ウメ、スモモなどの果実や、酒粕、甘麹で培養した酵母を練り込んだパン、焼き菓子が毎週20種類ほど並ぶ。定番メニューの直径20㌢ほどのカンパーニュ(700円)は国産ライ麦粉に旬の果実の酵母を練り込む。深い味わいもさることながら、天然酵母を使ったパンは体に良いと口コミで客を呼び込んでいる。

同市出身の柳村さんは「弁護士になり、平和な社会を作りたい」と大学で法学を専攻。学んでいくうちに法学は必ずしも世の中を良くする学問ではないと気付き、学ぶ意欲が薄れる。担当教員からも「君がやりたいのは革命だ」と言われた。

文章を書くことも好きだった柳村さんは「マスコミ講座」を受講することに。おしゃれな雑誌を作る会社に就職したいと思ったが、提出するレポートの題材に「社会悪について」「不正を正す」などのテーマばかり選んでしまう。教員から「雑誌ではなく新聞を作るべきだ」と言われる。法学は自分には合わないと思いつつも大学院へ進学。労働法の研究をしていたが、やはり中退することに。

地元新聞社で記者として働き始め、その後、都心の編集プロダクションで校正や執筆の仕事をした。結婚や出産を機に自宅で仕事をするようになった。子どもを保育園に預けられるようになり、2017年からは本紙の記事も書いた。

働きながらも趣味でパンを焼いていた。天然酵母を作り始めるが、次々にパンを焼かないと酵母は死んでしまう。パンを焼くのはいいが消費が間に合わない。知人に配り始めると、おいしいと評判になり売って欲しいと言われるようになる。イベントへの出店依頼まで来るようになった。

パン屋を始めるには保健所の許可が必要だ。知人に家を改修すればできると言われるが、踏ん切りがつかない。

19年に母が病気で倒れたことをきっかけに、「今やりたいことをやらなければできなくなるかもしれない」とパン屋を開く決意をする。だがどこかで誰かに止めてもらいたいという気持ちもあった。夫の成毅さんに相談してみると「やってみたら良い」と後押しされてしまう。自宅に厨房を作るため、業者に見積もりを取ると、すぐできると言われる。もう逃れられない。水場以外は、日曜大工が得意な成毅さんが作ってくれた。ついにパン屋を開店することに。現在は自家培養酵母のパン教室も開催している。

「自分の作ったパンで人が笑顔になってくれる。笑顔を見た人がまた笑顔になる。笑顔の連鎖で地球の裏側まで笑顔にしたい」と柳村さんは世界平和への野望を語った。(鋤柄)