青梅駅前 みどりや文具 新たな歴史を歩み出す

青梅駅の目の前にある共同ビルの一角に、創業年の「みどりや文具」がある。店を営むのは2代目店主澤渡敏夫さん(71)、妻の一江さん(66)、娘の葉子さん。一つひとつセレクトされた文具や、昔から変わらず扱う事務用品、画材や紙も豊富にそろう。額の販売もし、敏夫さんの熟練した技術で仕上げる額装は西多摩の作家からの信頼が厚い。

オリジナル商品にも力を入れ、紙の裁断で出た端材を商品化したカラフルなメモ帳は、表紙にアンティーク収集を趣味にする息子の祥さんが集めた100年前の英国のシガレットカードが添えられている。このカードを集め、額装を依頼する客もいる。

双清の手漉き和紙で作った障子紙

あきる野市で和紙の原料であるコウゾ栽培から紙漉きまでを一貫して行う「双清」が漉いた和紙を、葉子さんが丁寧に「紙継ぎ」したオリジナルの障子紙も販売する。

「みどりや文具」は1955年に敏夫さんの父が紙問屋として創業。主に包装紙の販売をしていたが、次第に文具を扱うようになった。当時は、青梅街道沿いに店を構えていたが、50年ほど前の防災街区事業で同駅前が整備され、共同ビルが建てられたことにより移転。大学卒業後に父と新しくなった店で働き始めた。それから半世紀が経ち、幅広い層の客に愛される町の文具店となった。

だが、1年後には「みどりや文具」が入るビルは駅前の再開発により取り壊される。老朽化により商業ビルの機能を満たしていないこと、空きテナントが多いことから、敏夫さんら地権者が08年頃から再開発の計画を始めた。13年に市街地再開発準備組合を発足。今年の4月下旬には都からの認可を受け「青梅駅前地区市街地再開発組合」を設立した。

「みどりや文具」は24年に竣工予定の複合施設内で営業を続ける。敏夫さんは「自分も店に立ち続けるが、次は娘が店を作っていく番だ」と話した。工事期間中も他のテナントを借り、営業するという。

共同ビルに隣接する青梅中央ビルも取り壊される。そのビルに創業90年のフルーツ、野菜専門店「やおうめ」がある。店主は2代目杉山実さん(82)。杉山さんは50年前の防災街区事業でも中心となり町の整備を進めた。

「やおうめ」の店主杉山実さんと息子で3代目の勇さん

「自分が生きているうちにビルを建て直すことになるとは思いもしなかった。次は、3代目である息子に時代に合った店を作っていってほしい」と話す。

同ビルに入る「丸梅花店」の5代目店主、林薫さんは「年前の整備事業に関わり、今回も敏夫さんらと計画を進めた。町は更新し続けていかなければならない」と話す。「丸梅花店」も娘であり6代目の飯島実奈子さんが店を受け継ぐ。

長年、駅前で商売を続けてきた3人は「後継者がいるからこそ、ここまで続けることができた。次は娘や息子が町を作っていく番だ」と、また駅前ににぎわいが戻ることを願った。(鋤柄)