奥多摩わさびを作り継ぐ わさび塾の受講生、通算78人に 台風19号で甚大な被害 

収穫したワサビを囲む、15期生と16期生

2019年の台風19号で甚大な被害を受けた奥多摩町特産のワサビ。生産現場では、再起へ向けた取り組みが続いている。その一つとして期待されるのは、高齢化などによって減少したワサビ農家の後継者育成を目的に町が主催する「奥多摩わさび塾」。19年に入塾した15期生5人が16日に修了式を迎え、同町大丹波で200本近いワサビを収穫した。

同塾は02年に始まった取り組み。同町山葵栽培組合の協力で町内のワサビ農家から指導を受け、4月から翌年10月までの1年6カ月で全10回の講座を受講する。ワサビ田の改良から苗の植え付け、水の管理、病害虫対策、落葉除去、霜よけ作業などを行い、10月の収穫で修了となる。19年以降の受講者は台風の被害を受けたワサビ田の復旧作業も行っている。

収穫したばかりのワサビ

これまでに通算78人が修了しており、中には休耕田を整備し、ワサビ栽培を続けるケースもある。このほど修了した5人は昨年10月に修了予定だったが、台風の影響で受講期間が2年半に伸びた。受講生の鈴木順子さんは「5年ほど前に奥多摩に移住した。知人のワサビ栽培を手伝っていたが、一から学びたいと入塾した。学んだことを生かして、今後も仲間とワサビを育てていきたい」と話した。

12期生で、大丹波のワサビ田を管理する山崎雅彦さんは「ここも石垣が崩れるなどの被害があった。復旧用に町がモノレールを設置してくれるなど、力になってくれたことに感謝している」と話す。台風19号による「奥多摩わさび」の被災は150カ所近くに及び、被害総額は23億円超。激甚災害の指定を受け、生産者が復旧を希望した場合、国や町の補助が受けられる。多くの生産者がワサビ栽培を諦めず、復旧が難しい場合は休耕田を利用して栽培を再開するなどしているという。

町内でワサビ栽培を行い、同塾の塾長を務める鈴木実さんは「1日も早く災害復旧し、災害に強いワサビ田を作る必要がある。産地としても出荷量を増やし、良質なワサビを作っていかなければならない。それには若い人たちの力が必要だ」と後継者育成を訴えた。(鋤柄)