奥多摩で美術家として生きる 移住36年の集大成 石山久輔展 せせらぎの里で12月5日まで

出展作品の「樹林」シリーズを背にする石山さん

「奥多摩で美術家として生きる石山久輔展」が奥多摩町立せせらぎの里美術館(同町川井)で12月5日まで開催されている。石山久輔さん(72、同町氷川)が自身で建てた自宅2階のアトリエから見える木々を淡いブルーで表現した「樹林」シリーズや、奥多摩の山並みを描いた油画を中心に、水彩画や日々の鍛錬として描き続けている素描など、約30点の絵が飾られている。

「足元にも美しい物は溢れている。何でもない落ち葉1枚に美しさを見出せるのが美術家だ」と話す石山さん。奥多摩駅から徒歩40分の地で、車も携帯電話も持たない昔ながらの暮らしを実践する中で出合った、植物、動物の骨、鳥の巣などを作品化したオブジェも展示されている。

中でも「人間ではこの造形は作り出せない」という、ノネズミが絵の具のチューブを少しずつかじったことによって生まれたというオブジェは面白い。25年ほど前に偶然見つけたというが、大切に保管し、美しいオブジェに生まれ変わらせた。

山形県出身の石山さんが奥多摩に移住したのは36年前。都心のアトリエが手狭になったことをきっかけに代替地を探し歩き、辿り着いたのが奥多摩だった。一面に咲き誇るワサビ田の白い花に心を奪われ、この地に制作の場を移したという。

同館や都心のギャラリーで発表を続けてきたが、油画からオブジェまで作品を一度に展示したのは初めて。

「現時点での私の理想の美を皆さんにお見せできる展覧会になっていると思う。奥多摩に移住していなければ、今の私はないと思っている。36年、奥多摩で美術家として生きてきた集大成です」と話す。

開催時間は10時~17時。月曜休館。大人300円。問い合わせは0428(85)1109まで。(鋤柄)