福生 石川酒造 ワインの名はIshikawa the 18th【連載④最終回】

前回までのあらすじ  石川酒造はワインの製造免許を持っていない。そこで石川彌八郎は、近隣あきる野市のヴィンヤード多摩の製造設備を借り、ワインを醸造した。そして、石川酒造がワイン製造免許を獲得した今、そのワインは石川酒造に移入され、最後の仕上げをして出荷の日を待っている。さて、そのワインの特徴は?

 今回発売するワインは、長野安曇野のシャルドネの白が300㍑、同じく安曇野のメルローの赤が1000㍑、そして北海道の山幸(ヤマサチ)の赤が500㍑の合計1800㍑。

 先日、製造部長の前迫晃一、ビール小屋の支配人安部直人、ソムリエの鈴木結衣等と最終的な社内テイスティングを行った。

 まずは安曇野のシャルドネ。よく冷えた白ワインをグラスに注ぎ、鼻に近づけた時に舞い込んでくるのは、青リンゴを思わせる爽やかな香り。これが香りの第一印象。口に含むと、リンゴをかじったときのような爽やかな酸味が広がり、何となく元気になったような気になる。不思議なもので、少し時間が経ち温度が上がると、バニラやキャラメルを思わせる甘くゆったりとした香りが漂ってくる。面白いワインだ。

 続いて安曇野メルロー。ミディアムボディーではあるが、ブドウを皮ごとつぶした時の果汁感がうっすらと残り、軽快ともいえる味わい。冷やして飲むのがお勧めだが、時間が経ち、空気に触れながら徐々に変わってゆく香りを楽しむのもいい。グラスに残ったわずかなワインをゆっくりと揺らしていると、干しブドウの香りも感じられるようになる。タンニンは控えめだが、しっかりとした酸が骨格を整えている。

 最後は北海道の山幸(ヤマサチ)の赤。あまり聞いたことのないブドウ品種は、それもそのはず。2020年12月にOIV(国際ブドウ・ワイン機構)に国際品種として登録されたばかりの品種なのだ。香りは個性的。スパイシーとの評価が多かったが、僕にはカンパリソーダを思わせる香であった。酸はほどほどで渋みは控えめ。肉料理に合わせれば間違いないが、あえて単体でこの個性を追究するのも楽しいかもしれない。

 これらをIshikawa the 18thのブランド名で発売する。名前の意図するところは、もちろん「石川家十八代目」であり、石川家18代当主の時代にワイン免許を取得した備忘だが、実を言うと「歌舞伎の「十八番」、野球のエース番号の「18番」にあやかりたい気持ちも添えられている。

 サブタイトルはDo you have a diamond in your heart?(心の中にダイヤモンドを持っているかい?)ダイヤモンドは輝きの象徴、夢や希望、または目標と考えても良いが、潜在的な才能と考えてもらいたい。つまり人は、自分でも気付かない何かの才能を持っていることがある。美術、音楽、執筆など30歳を過ぎてから始め、みるみる上達する人がいるからだ。

 埋もれていて気付かないだけ——。このワインが皆さまに潜む「磨けば光る何か」を表に出すきっかけになればと願いつつ、この連載を終了する。