開発したゲーム 世に残したい 奥多摩町 山本さん 病患いkitokitoに製造依頼
ノベルティや木育玩具など木製品の企画・販売を手掛ける一般社団法人kitokito(八王子市、野口省子代表)がこのほど、多摩産材を使った新商品で子どもも大人も遊べるバランスゲーム「ACTOP〜古代建築『賢者の塔』」(1万1000円)を発売した。ゲームを開発したのはボードゲームクリエーターの山本光夫さん(奥多摩町川井)。
ゲームは複数人のプレーヤーが順に、3〜6個の立方体で作るさまざまな形の「ポリキューブ」を積み上げ塔を完成させるもの。積んだキューブの数がプレーヤーの得点になり、順位を競う。
9マスのプレートの真ん中にはポリキューブを置けなかったり、ポリキューブを積むたびに小さなキューブ「バランスストーン」を置かなければならなかったりするルールもある。
プレーヤーが協力しなければ塔は完成しないが、最終的に順位を決めるのもゲームの面白さ。そのほか、ポリキューブを隙間なく積み上げ直方体の完成を目指したり、積み木のように遊んだりもできる。
山本さんは2016年に『賢者の塔』を開発し、17年に新宿区の東京おもちゃ美術館主催のグットトイ賞を受賞。18年には米国の玩具メーカーと契約し「KOZO」の名で発売した。
国内で販売する商品は山本さんがハンドメイドで製造してきたが昨年4月、平滑筋肉腫を患い、製造が困難に。山本さんは「これまで50種類近く開発したゲーム。自分が亡くなれば、ゲームを世に残せない」と、自身の代わりに製造を担う業者を探し始めた。
だが、コスト面や製造の難しさから引き受ける業者は見つからなかった。そんな時、立ち寄った飲食店で本紙に掲載されたkitokitoの記事を目にし、「福祉施設でありながら、高い技術力のある会社であれば引き受けてくれるのではないか」と、すぐに連絡をとったという。
「賢者の塔」をプレーした野口代表や、香川武生理事、加藤圭介施設長はすぐにゲームの面白さに引き込まれた。数日後にはサンプルを完成させ、翌月には契約を結んだという。
野口代表は「不思議な縁でゲームを作らせてもらえることになった。賢者の塔は教育機関や企業研修等でも使える。決して安くはないが、本当に面白いと思ってくれる人に届けたい」と話す。
山本さんは「病気は良くなったが、以前のようにゲームを作る体力はなくなった。まだまだアイデアはたくさんある。これからも面白いゲームをkitokitoさんと一緒に作って行けたら」と笑顔を見せた。(鋤柄)