歌で綴る幕末史『歌剣の維新歌』 本紙元記者、吉田さん出版

新著を手にする吉田さん

青梅市師岡町在住で本紙の元記者、吉田慎太郎さん(81)の著書『歌剣の維新歌』が1月25日、展転社から発刊された。四六版432㌻。1853年の黒船来航から1867年の大政奉還までの14年間の維新動乱を、志士が残した歌を通して描いた「歌で綴る幕末史」。歌が詠まれる歴史的背景の記述と同程度に歌の解釈に力を注いだ点に、他の幕末ものにない独自性がある。

 母親が詩吟を教えていたこともあり、歌や漢詩に早くから馴染みがあったという吉田さん。40代くらいから自分でも歌を詠み始め、多くの作品に触れることで解釈の素養を身につけた。幕末に強い興味を持ち、高杉晋作や梅田雲浜ら幕末志士の残した歌を調べるうち、「彼らが一心に尊皇だ!攘夷だ!と行動したように思っていたが、そうではなく喜怒哀楽といった普通の人間感情で行動したことが分かってきた」。だが、そこまで踏み込んで書いた書物が見当たらず、「ならば自分で書いてみよう」と一念発起した。

 記者を引退後3〜4年かけて草稿をまとめ、東雲短詩会会長で自らの歌の師である高山重義さんに意見を求めたところ高評価。高山さんに背中を押され、不二歌道会会員で元都議の野村有信さんを通じて出版社を紹介された。出版社に発想の独自性を認められて発刊が決まった。

 吉田さんは「人生を振り返ると、歌づくりも学問も中途半端で終わった。この際、中途半端を貫こうと、歌と史実が補完し合うことで面白さが増すような構成を狙った。開国要求に直面した幕末の日本人の生き方を、歌を通して知ってもらえたら。この先、日本を背負っていく若い人にもぜひ読んでもらいたい」と話している。

 2750円。近くの書店で注文するか書籍通販サイトで購入できる。     (伊藤)