「あきる野らしさ」感じて フレア五日市の外構に植栽

 駅前に小さな森のような緑の空間があり、ベンチで人々が語らっている。20代、哲学者庭師ジル・クレマンにあこがれ旅したフランスで、こんな素敵な光景を目にした。駅前に森をつくる−。いつかやってみたいと思っていた仕事の機会は意外と早く訪れた。

 武蔵五日市駅前施設フレア五日市の外構植栽を手がけた立山産業(福生市)の森屋さん(32)は、あきる野の里山で目にする植物を集め、森をつくるイメージで植えていったという。地元の人にとっては落ち着く空間、観光客には「あきる野らしさ」が伝わる空間になればと願う。

伐採が得意な佳山さん(右)と植栽が好きな佳泉さん。得意分野が違うので補い合えるという。ともにあきる野市養沢出身

 地域の植生にならい、植栽する植物の種類だけでなく乾燥防止の落ち葉マルチ、落ち葉止めにケヤキの枝を使うアイデアなどを、現場を取り仕切る外構設計のスタジオテラ(大田区)に提案。石井秀幸社長が全面的にアイデアを採用し、地域性豊かな緑のエリアが完成した。「木だけでなくホタルブクロやヘビイチゴなど下草も大事に植えました。こだわりは山ほどあります」と佳泉さんは、やりがいの大きな仕事だったと振り返る。

 佳泉さんに現場を任せたのは、兄で専務のさん(36)。他社で8年経験を積み、着工前に家業に入った弟を頼りにしていた。「植栽の知識があり、興味も熱意もある佳泉が適任だと思った」。「観光に力を入れる地域のシンボル的な施設にぜひ携わりたかった」と、生まれ育った地域への強い思い入れを口にした。

オープンイベントでは市民による植樹ワークショップも

 これまで緑地管理を得意としてきた同社に植栽知識のある佳泉さんが加わり、幅広い仕事に対応できるようになったという。兄弟そろって家業を盛り立てる流れになったことは「両親がうまく導いてくれたのかな」と顔を見合わせた。 (伊藤)