木工から漆塗りまで一人で 青梅で店舗兼工房、まりも屋主宰
青梅市友田町、交通量の多い通りから急坂を上った先に、工房まりも屋はある。店舗を兼ねた工房で、こぢんまりとした店内には大小さまざま、色とりどりの漆器が並ぶ。主宰しているのは木工・漆作家「サタヶマユミ」の名で活動している佐竹真由美さん(40、福生市武蔵野台)。24日~来月3日は文京区根津のギャラリー汐花で、陶器作家との二人展「とうきとしっき」を開催する。
サタヶさんが生まれたのは「山中漆器」が根付く石川県加賀市の山中温泉。実家は漆器問屋、父は漆器職人という環境で育つ。「生まれたときから身近に漆器があって。当たり前すぎて古臭いと思っていた」と振り返る。
多摩美術大学に進学し上京。油絵を学んだが「人と関わりをもてるような表現をしたい」と、興味の対象は空間全体を演出する「インスタレーション」に変わっていった。卒業後もイベント会場の空間演出などを手掛けるなどしていた。
ただ、「人の関わり」をテーマにしていた表現方法だったが、「作品が孤立している」と感じるように。その葛藤にさまざまなストレスも重なり、いつしか人嫌いになっていたという。衝動的に東京から北海道へ、原付バイクで一人旅に出たのが26歳のとき。道中は何度もバイクの故障に見舞われたが、そのたびに見ず知らずの人に助けられた。「親切にしてもらうことのありがたみを痛感しましたね」。人の優しさを思い出せる旅だった。
3カ月ほどの旅を終え久しぶりに実家へ。父が作った汁椀で味噌汁を飲んだとき、「これだ」と気付いた。楽しくも過酷だった旅を終えまっさらな気持ちで漆器に触れ、「私はこれを作りたいと初めて思った」という。
その後、結婚・出産を経て、09年から石川県挽物轆轤技術研修所に入学した。木工から漆の扱い方まで漆器作りの全工程を学んだ後、14年から現在の地に工房を構え、まりも屋として本格スタート。2児の子育てをしながら、子どもを産み育てるように器を作り続けている。
さまざまな表現方法を経てきたが、常に芯にあるのは「人との関わり」。「私が作った器を使っている方が、ご飯がおいしく感じる、持ったときにホッとする、と言っていただく。皆さんが幸せを感じるような時間にかかわれたことが、私もすごく幸せ」という。
今後は幼い頃から好きだった「絵」を漆器に取り入れていきたいという。「見えるか見えないかのものを描いていきたいな、と。見つけた人がちょっとうれしくなるような隠し味になったら」と話す。
詳細はフェイスブックページhttps://www.facebook.com/marimoya.kinoutuwaへ。問い合わせはメールmarimoya04★gmail.comまで。 (佐々木)
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