「麹」特集 酵素パワーでおいしく元気に!
日本では古くから、醤油や味噌、酒などを作るときに使われてきた麹。豊富に含まれた酵素のおかげで、料理に使うと甘みや旨みが増す上、健康や美容にも良いとますます注目を集めています。今回は、そんな麹にこだわるお店や人をご紹介します。
青梅 伊東麹店
米・麦の味噌麹を製造・販売
創業100年、伝統製法を守る
西多摩では現在、麹を製造・販売する店はあきる野、青梅に1軒ずつあるのみ。その1軒、青梅駅からほど近い伊東麹店(青梅市上町)は、1887(明治20)年の創業以来、無添加、手造りの伝統製法を守りながら麹造りを続ける。
「一口に麹といっても、酒用、味噌用、醤油用など異なる菌種を使って作る。うちで作るのは味噌用の米麹と麦麹です。京都から麹菌を取り寄せています」と四代目店主の伊東茂さん(64)。
かつて同店は、醤油の製造にも重きを置いていた。しかし戦後、茂さんの父の代には、大量に出回る大手メーカー品の価格には勝てなくなり、味噌麹だけに絞って現在に至る。自家製味噌を造る客が買い求め、長年の顧客も多い。
店舗奥の作業場で麹造りを行うのは10〜6月。味噌造りの季節である12〜3月が注文のピークで、3日に一度、150㌔の米、30~40㌔の麦を仕込む。
麹仕込みの工程は4日間で、まず米(麦)を洗う。次に蒸かして冷まし、麹菌を混ぜ、温度を保った室で発酵させる。作業はすべて伊東さん一人で行う。
店では、味噌造りの材料となる大豆(北海道産)、天然塩も併せて販売している。伊東さんがおすすめする麹と大豆の割合は、麹2升、大豆1升(約1・4㌔)、塩700㌘。このセットで約6㌔の味噌ができ、価格は3466円。「伝統製法の麹を使った自家製味噌は、本当の味噌のうまさが味わえる。手間をかける価値があります」と伊東さん。
麹のみも500㌘から販売(米麹594円、麦麹486円)。問い合わせは0428(22)2973まで。不定休のため来店の際は連絡を。 (澤村)
青梅 麹料理×shotBar SINBOW
麹を使ったメニューずらり
酒屋ならではの品ぞろえも魅力
麹料理が味わえるショットバー「SINBOW(シンボー)」(青梅市木野下)は、岩蔵街道の藤橋一丁目の交差点近くの住宅街に静かに佇む。同じ敷地内で息子夫婦と武藤治作酒店を営む武藤好恵さん(65)が、昼間の酒屋の仕事を終えてから一人で切り盛りする。
開店したのは2年半ほど前。「店を出すのは若い頃からの夢。今始めなければ!との思いで、自宅を手作りで改装してオープンしました」と割烹着姿の好恵さんはほほ笑む。店名は亡き夫、伸一さんの愛称から付けた。
「麹料理」に目覚めたのは数年前、本業の酒屋で取引する酒蔵から、麹の魅力を聞いたことがきっかけ。好恵さんはその美味しさを知り、店で出すなら麹料理をと決めたという。麹は福岡の酒蔵から取り寄せている。
店には自家製の塩麹、醤油麹を使ったメニューが並ぶ。「麹を使うことで味がまろやかになり、素材の味が引き立ちます」と好恵さん。人気の「鶏竜田揚げ」(600円)は、揚げる直前に醤油麹を肉にもみ込んだもので、肉がなんとも柔らか。「油揚げチーズピザ」(600円)、麹の乗った「やっこ」(400円)など、和にも洋にも合う。麹をそのままつまみにするのもいけるとか。
さまざまな酒を気軽に楽しめるショットバーなだけあって、店のカウンターには珍しい焼酎や日本酒がずらり。酒屋を継ぐ息子さんが、全国から厳選してきたラインナップが楽しめる。焼酎1ショット400〜650円、日本酒1ショット500〜600円。
営業時間は午後7時〜11時(日曜は午後5時〜)、木曜定休。問い合わせは0428(31)4886 まで。(澤村)
あきる野 こめはな屋
麹とごはんの甘酒でスイーツも
麹とごはんだけで作った甘酒を使う砂糖不使用のスイーツや、麹で旨みを引き出した料理の数々―。あきる野市山田の佐野芙美子さん(40)は、麹を使ったオリジナルメニューを生み出している。1年ほど前からは「こめはな屋」という屋号を使い、様々なサークルから注文を受けて料理を作ったり、甘酒作りの教室などを開催したりと、活躍の場を広げている。
「3度の飯より、3度の飯を作るのが好き」と笑う佐野さんは毎日3食、欠かさず家族の食事を用意する。思い返せば、小学校入学前から愛読書は母が買っていたレシピ本。まるで図鑑を見るように毎日眺めていた。結婚前は幼稚園教諭、13年ほど前からはバランスボールの指導者、9年ほど前から約5年間はヨガ講師をするなど、様々な経験を経て、「料理を作るのが天職」と思うようになったという。
麹に出会ったのは10年ほど前。子どものおやつを作るのに「バターや砂糖たっぷりではないものを」とレシピ本を探す中で、ごはんと麹だけで作った「甘酒」を使うスイーツに出会った。当初は既製品の甘酒を買っていたが、「自分で作ったほうが安くておいしい」と、次第に自作するように。雑穀をプラスするなどアレンジを加えながら、独自のレシピを生み出してきた。
「麹で作った甘酒はそのまま飲んだりお菓子に使ったり、調味料に使ったりもします。3合のごはんに300㌘の麹で1㌔近く作れるんですが、あっという間になくなります」と佐野さん。「今は新しいレシピを考えて、作って、食べてもらうのが楽しくて仕方ない。幼い頃からインプットばかりしてきたので、アウトプットの時期なのかも」と話している。
不定期で麹を使った甘酒やスイーツ作りの教室を開催中。問い合わせは090(7904)8901まで。 (佐々木)