国際派の若女将が新風 茶処を20年ぶりに復活 御岳山 都文化財の宿坊・東馬場

青梅市御岳山の御師集落で、都の文化財に指定されている宿坊・東馬場(馬場家御師住宅)。慶応2(1866)年に建てられた茅葺の住居には、現在も同家14代目で御師の馬場克巳さん(66)一家が暮らす。屋根の老朽化で雨漏りなどの被害があったが、葺き替え工事が進められ、2018年に修繕が完了。宿坊を再開し、昨年の正月からは日中に茶処を開いている。
東馬場では20年ほど前にも一時、茶処を開いていた時期がある。「お客さんが気軽に入れるようにしたい」との思いで、14代目女将の幸代(59)さんが切り盛りしていた。今回の再開に当たっては、2017年に東馬場に嫁いだ若女将・佳世子さん(38)が、情報発信やデザインなどで後押しし、テレビの情報番組や海外メディアでも取り上げられる場所になった。
佳世子さんと御岳山の出会いは2015年11月。「友人に誘われて参加した観光協会の登山イベントで始めて来ました。横浜生まれで生粋の浜っ子。青梅も御岳山も宿坊も知りませんでした。こんなきれいなところが東京にあるんだと驚いたのですが、もう来ないだろうなとも思っていました」。
1年後、奇跡が起こる。同イベントが再び開催される案内が届き、友人から再度誘いが来たのだ。その時に出会ったのが、後に夫となる同家15代目の晃一さん(38)だった。直後にプロポーズされ、半年後には結婚した。現在は1歳7カ月と3カ月の男の子二人の母でもある。
高校時代から留学経験があり、日本の大学を卒業後、イギリスの大学へ進み美術を専攻。その後、現地のデザイン事務所などで働いた。日本に戻ってからは、塾で英語講師をしていた。こうした佳世子さんの経験が、東馬場に新しい風を吹き込んだ。Wi‐Fiの設置、ホームページなどの開設、家紋を取り入れた名刺制作やメニューの英訳などを、子育ての合間をぬって進め、利用客の増加に貢献。佳世子さんの奮闘には、山の先輩女将たちからも応援メッセージが届くという。
「この家に初めて来た時、懐かしさを感じ、ただいまという気持ちがしました。ここにいると、四季の移ろいを五感で体験できます。今後は、スペースの貸し出しや東馬場ツアーなど、ここでしか体験できないことを提供していきたいです。外国人のお客さんも多いので、よく使う英語を一覧にして山の皆さんに共有していくようなこともできるといいですね」。
茶処の営業時間は午前8時半~午後5時。問い合わせは0428(78)8446、メールinfo★higashibaba.comまで。(宮前)

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