沢井駅 澤乃井櫛かんざし美術館「夏の髪飾り展」 9月6日まで 自由研究もサポート

澤乃井櫛かんざし美術館(小澤徳郎館長・青梅市柚木町)は、夏の素材の江戸ギヤマン、水晶、翡翠、ビードロなどの櫛、簪(かんざし)、笄(こうがい)を集めた「夏の髪飾り展」を開催している。夏休み期間中(7月21日〜8月31日)、小学生〜大学生の希望者には自由研究用資料(同館豆知識)を進呈している。9月6日まで。

同展は約4000点の所蔵品中、夏の髪飾り約500点を江戸時代(第1展示室)、明治・大正・昭和時代(第2展示室)、日本の髪型(特別展示室)の3部に分けて展示。

①江戸ギヤマンの櫛、 笄の名品

江戸時代の部の代表展示は江戸切り子ギヤマン鼈甲(べっこう)櫛とギヤマン笄の名品=写真①。当時の技術ではまだ珍しかった素材の江戸ギヤマン(ガラス)を削って細い櫛の歯を作るのは難しかったため櫛の歯の部分には鼈甲が使われている。漆黒の髪に白く透明のギヤマンの櫛と笄を挿した女性の得意顔が想像される。

②団扇型の鼈甲・象牙簪

団扇型蔓草文様簪=写真②=は江戸の蒔絵師の梶川派の作で団扇の部分に夏の草花の蒔絵、足の部分が鼈甲と象牙の2種。同じく江戸蒔絵師、原羊遊斉の鮮やかな渦巻文様蒔絵櫛も見どころの1つ。

③乾隆ガラスと水晶を用いた平打ち簪
④芦鷺松林文様蒔絵瑪瑙櫛

涼しさを感じさせる水色の中国製の乾隆ガラスと水晶の平打ち簪=写真③。赤い瑪瑙の櫛、笄=写真④=は表に芦(あし)と鷺(さぎ)、裏に松林の蒔絵が施された逸品。そのほか夏向きの白蝶貝の染付櫛、翡翠の簪、ビーズ付き櫛、ステンドグラス付き櫛なども。長崎出島風景ガラス絵図櫛は小品ながらガラスの表と裏に絵を描いた手の込んだ技法が見逃せない。

享保期以降流行した耳かき付き簪は贅沢禁止令に対し実用を口実に盛んに作られたといわれる変わり簪。

⑤明治期を代表する水晶櫛と笄
⑥ビードロ製の色とりどりの細簪、ヘアピン

明治・大正・昭和時代の代表展示は、蛇籠鮎文様蒔絵水晶櫛・笄=写真⑤。美しい水晶に夏の風物を螺鈿(らでん)と蒔絵で描いた名品で、素材の天然水晶をじかに削り出して作った優品である。富国強兵を国是とした明治期以降の特長として髪飾りも形が小ぶりで落ち着いたものになったその分、職人の腕にいっそう磨きがかかり細緻な細工となったといわれる。一方、比較的安価なビードロ製の色とりどりの細簪、ヘアピン、笄=写真⑥=などが大流行した。

日本の髪型では、島田髷など日本の髪型種が展示してあるほか、8月2日までの期間限定で歌舞伎の坂東玉三郎さんが寄贈した舞台衣装が展示してある。次号で紹介。

小澤館長は「昔より髪は女性の命と言われ、その髪を守り、飾ってきた櫛、簪、笄など髪飾りを付けた髪を想像しながら鑑賞していただきたい」と話す。

開館時間は10時〜17時。月、金曜休館。入館料は大人600円、学生500円、小学生300円。問い合わせは0428(77)7051まで。(吉田)