西多摩から2件都文化財指定ヘ 十一面観音菩薩立像と猿曳駒絵馬

都文化財保護委員会(後藤治会長)は17日、文化財4件を都有形文化財に指定するよう答申した。このうち西多摩からは奥多摩町白丸の十一面観音菩薩立像とあきる野市引田の真照寺に伝わる猿曳駒絵馬が指定候補になった。今後開かれる都教育委員会で正式に決定する。

石水山杣入観音堂に安置されている十一面観音菩薩立像

十一面観音菩薩立像は石水山十一面観世音大菩薩護持会が所有し、石水山杣入観音堂の木造厨子内に安置される。

仏師定快が62歳のときに制作したもので、像高は82・4㌢。造像技法は割矧ぎ造りで、漆箔が施され、玉眼は嵌入されている。像の左に不動明王立像(像高48・6㌢)、右に毘沙門天立像(同48・7㌢)が随侍する。古くから白丸で活動した修験者の守護仏として祀られ、霊験ある観音として近隣の村民や街道を行き交う人々から広く信仰された。

仏師や製作年に関する銘記を有する鎌倉時代の基準作として日本彫刻史上に重要な意義を持ち、中世から近世にかけての多摩地域での信仰と仏師たちの活動を考察する上で歴史的、文化的意義が非常に高いという。

真照寺に伝わる猿曳駒絵馬

猿曳駒絵馬は縦23・7㌢、横16・7㌢、厚さ1・2㌢。1589(天正17)年に制作、寄進した経緯が陰刻されており、都内に現存する最古の絵馬。絵馬として寄進されたが、後に豊蚕を願う村民などに摺り与えるため版木に転用されたという。戦国時代末期の社会情勢や文化事情、江戸時代以降の多摩地域の人々の信仰を物語る貴重な民俗文化財だという。

いずれも通常は非公開となっている。(岡村)