のどごし抜群の二八そば こうえい庵 あきる野の小俣さんが販売
細くて長く、コシのあるそばに甘めのつゆがよくからむ。のどごし抜群の二八そばを打つのが、こうえい庵(あきる野市引田)の小俣幸英さん(65)。店舗は構えず、注文に応じてパック詰めの生そばを販売している。
ソバは長野県の農家から、つゆのだしをとるかつおぶし、さばぶし、あじぶしは小田原の乾物屋から直接取り寄せている。国産の食材を使っているのに、価格は1パック2人前(300㌘、つゆ付き)で900円。「安すぎる」という声も多いが、小俣さんは「1000円出して100円おつりが来るところがいいんだ」と譲らない。
60歳で消防署を退職したらそば屋をやろうと思っていた。知人の紹介で熊本県南阿蘇村の師匠に就くことが決まり、「半年ほどゆっくりしてから行こう」とのんびり構えていた矢先の2016年4月、熊本地震が発生。南阿蘇村でも1600棟を超す家屋が半壊以上の被害が出た。
「ボランティアで地元の人にそばを振る舞いたいが、働く人がいない」という師匠を手伝うため、退職後間もない小俣さんは現地に飛んで行った。それから約1年、住み込みで師匠を手伝いながらそば打ちを覚えた。
その後、小田原の実家で94歳の母を看取ると、消防学校時代の同期の鈴木宏さんを頼ってあきる野に来た。
「こうえい庵」の屋号でそばの販売を始めたのは一昨年の暮れ。クチコミだけの営業で着々とファンを増やしている。
「うまいそばを食わせたい一心で、儲けは二の次」と小俣さん。だが、実際には儲けがなければ商売は続かない。ソバの生産者や乾物屋に何度も通って熱意を伝え、通常より安い値段で材料を仕入れることでしのいでいるという。「食べた人においしいと言ってもらえるのがうれしい。それだけです」と清々しく言い放った。
そばの注文は3パックから。近隣には配達する。問い合わせは090(5805)7480まで。月のうち半分は建築現場で働いているため、電話に出られないこともある。(伊藤)