「流れ」をテーマに玉堂美術館で記念展 小中高生向け夏休み企画も
画家、川合玉堂が戦時中の厳しい状況を反映するかのように、激しいタッチで波のうねりを描いた「荒海」(1944年、山種美術館所蔵)という作品がある。「もし玉堂が生きていたら、今日の混乱する世の中が変わることを願い、流れのある絵を描いたのではないか」と企画された開館60周年記念展第3弾「流れ」が9月5日まで玉堂美術館(青梅市御岳、小澤芳郎主事)で開催されている。
川や滝を中心に、流れにまつわる絵が飾られている。中でも画面だけで高さ2㍍を超える屏風画「瀑布」(1909年)は迫力がある。岸壁の上から流れ落ちる滝が、玉堂の臨場感溢れる筆の動きで見事に表現されている。
5人の釣り人が描かれた「夏川」(1953年)は玉堂が晩年に手がけた作品。弟子が「釣り人を、一人足すことも、減らすこともできない完璧な構図だ」と感服したと言われる絵で、瑞々しい青色が見る者の心を爽やかな気持ちにさせる。
1956年に米ニューヨークで開かれた世界美術展に日本代表として出展された「鵜飼」(1956年)は、幼少期を岐阜県で過ごした玉堂が200点以上の作品を残したテーマ。中でも今回展示される作品は傑作と称される。
小澤主事は「このような時にこそ、美術館としてできることをしたいと3回の記念展を開催してきた。今回は、少しでも皆さんに涼しげな気持ちになってもらいたい」と意図を説く。
夏休み企画で31日まで小中高校生の来場者に同館オリジナルスケッチブックを無料配布している。
開催時間は10時〜17時(入館は16時30分まで)。月曜休館。入館料は大人500円。問い合わせは0428(78)8335まで。
(鋤柄)