陶器なのに動く!?注目の若手陶芸家 岡村悠紀さん あきる野市

毛もリアルに再現されたモクズガニ

陶器でできた本物さながらのタラバガニや、モクズガニがSNSを中心に大きな話題を呼んでいる。
Twitterに作品をアップすると1万以上の「いいね」が付き、高い写実性には「リアルすぎる」「技術がすごい」など称賛の声が寄せられる。テレビや雑誌でもたびたび取り上げられている。

リアルなだけではない。「陶製自在置物」と呼ばれ、一本一本の足から爪先まで、全ての関節が可動する。一体のタラバガニは55個のパーツから成り、西洋の可動式人形ビスクドールの技法を応用し組み立てている。

自宅の一室を作業場にする岡村さん

作品を手掛けるのは「小さい頃から生き物が好きだった。生き物に関わる仕事がしたいと思っていたら、生き物を作っていた」という岡村悠紀さん(32、あきる野市伊奈)。2019年、茨城県陶芸美術館で開催された、「いきもの狂騒曲―陶芸フィギュアの現在―」への出展をきっかけに注目を集めた。

「最初は動かない生き物を作っていたが、陶器は割れやすく、カニの爪先などは焼成段階で割れてしまうことが多い。パーツを分ければ問題を解決できる。さらに動かすこともできるのではないかと考えた」と陶製自在置物の誕生について話す。

山形県出身。東北芸術工科大学工芸科(同県)で陶芸を学んだ。卒業後、山梨県でレジャー施設の陶芸講師を1年務めた後、地元に戻り陶芸家のアシスタントとして働きながら制作を続けた。2017年に活動の場を東京に移したいと、自然豊かで生き物が多く生息する同市に移住した。

サラリーマンをしながら作家活動を続け、19年に日本陶芸展に入選。個展で作品を発表すると、美術品のコレクターや、生き物好きから高い評価を得た。現在は作家一本で活動する。

「モクズガニの毛を陶器で表現するのは難しい。だからこそ面白い。今後は陶器の限界に挑戦し、よりリアルな表現を求めていきたい」と語った。

10月にはギャラリー・マルヒ(文京区根津)で個展を開催。10種類以上の甲殻類を展示する予定。(鋤柄)