奥多摩町 廃校を活用した宿泊施設 OKUTAMA + 個性的なスタッフが活躍

佐久間さんのパフォーマンスの様子。ピアノを担当したのは町内在住の調律師の内田陽子さん

廃校を活用した宿泊施設「OKUTAMA +」(奥多摩町川井)で働く3人のスタッフは個性派ぞろい。現代美術家で華やかな経歴をもつ佐久間すみれさんは、1年ほど前から同施設の運営を手伝いながら、作品を制作してきた。他の2人もカヌービルダー、茶道家の顔を持ち、それぞれの特技を生かして施設を盛り上げようとしている。(鋤柄)

佐久間さん(36)のパフォーマンス「Staying here and there」が11月20日にあった。廃校に残された椅子や机、掃除機などを組み合わせたインスタレーション作品を中心に、ギターとピアノの音が響く。佐久間さん自身や鑑賞者すら巻き込み、空間全体が作品へと変容していった。

愛知県出身の佐久間さんはスイスの大学でビジネスを学んだ後、映画制作会社でのマネジメントや医療機器メーカーの欧州販路拡大を任されるなど、10年以上国際ビジネスに携わり、数カ国で仕事や生活をした。

そんな中、ロンドン滞在中に現地のアーティストらと活動を共にするようになった。高校時代から続けている華道で培った哲学をベースに、自身の表現活動の幅を広げた。2019年に帰国し、本格的にアーティスト活動を開始した。

アトリエを求め、中央線沿線の物件を探していた時に青梅市沢井の家と出合い拠点を移す。地域での活動を広げていきたいと同施設を手伝い始めた。

学校に残された廃品で作品を作り始めて1年。来年、ドイツに活動拠点の一部を移すこともあり、奥多摩での活動の節目として今回のパフォーマンスを企画した。

パフォーマンスでギターを演奏したカヌービルダーでありインストラクターの山﨑邦彦さん(63)はカヌー制作の技術を生かし作品制作のサポートもした。同町にカヌー工房を構え、民泊も営んでいたこともあり、2年ほど前から施設の運営に携わっている。元美術室を活用し、カヌー制作やパドル作りのワークショップを開催。施設にあるバレルサウナの設計、制作も手掛けた。

鑑賞者に茶や手製の甘酒を振る舞ったのが茶道家の佐藤華琳さん(22)。神奈川県出身で、小学校に上がる前に茶道を始めた。大学卒業後、地域おこし協力隊として活動したいと考えていた時にスタッフ募集を知った。スキルアップを図ると同時に、訪れる観光客に茶会を通し優しい空間を共有していきたいと働くことを決めた。11月12日には屋外で茶を入れて楽しむ「野点会」を開催した。

佐久間さん、山﨑さん、佐藤さん(右から)

3人は「廃校を活用した宿泊施設というだけでない新たな魅力や価値を生み出していきたい」と話し、今後もさまざまな活動を展開していくという。