日の出町 大久野幼児園が森の幼児園に 保護者が70年の歴史引き継ぐ 園児も募集

自分たちで染めた藍染めのTシャツを着た園児らと印南さん、田中園長、小林さん(後列左から)
自分たちで染めた藍染めのTシャツを着た園児らと印南さん、田中園長、小林さん(後列左から)

 日の出町大久野の豊かな自然環境の中、1日の大半の保育を屋外でする「大久野幼児園 森の教室」(田中則子園長)が来年度から、保護者らが立ち上げた一般社団法人「紡ぐ手」に運営を引き継ぎ、「自然保育 森の幼児園」として再出発する。8月15日から園児の募集を始めた。

 園は戦後間も無く近隣の子どもたちのために「青空教室」を開いたことが始まり。次第に就学前教育が重視されるようになったことや近隣の母親たちの幼稚園開設を希望する声を受け、54年に地域の自治会館を借りて園を開いた。84年からは田中園長(87)が運営を引き継ぎ、2011年から欧州の園舎を持たない「森のようちえん」を倣った自然保育を開始した。

登山帰りに薪を運ぶ園児ら
登山帰りに薪を運ぶ園児ら

 週に一度の登山、夏は園の近くの川で毎日遊ぶ。遊具やおもちゃは使わず、植物、石、水、土などで園児が遊びを作る。釜戸飯の給食や弁当も毎日園庭で食べ、釜戸の薪集めは年長児が任されてきた。

 自然保育を受けさせたいと近隣住民だけでなく、西多摩各地から子どもを預ける保護者がおり、中には杉並区から通う園児もいたという。だが田中園長は、自身が高齢になったこと、後継者がいないことなどを理由に今年度いっぱいで閉園を決めていた。

 昨年秋頃、父母会で閉園を伝えると「他にない環境や自然を生かした保育を、これからの未来の子どもたち残したい」との声が上がった。保護者らは園存続の可能性について話し合いを重ねたが、園のある幸神自治会との「田中園長の引退後は閉園する」という約束、園舎として使う自治会館の老朽化など、さまざまな問題に直面した。

 自治会や地域住民の信頼が必要だと今年5月、印南幸恵さん、小林かおりさん、佐藤明希さんが保護者としてではなく、代表理事となり、一般社団法人「紡ぐ手」を設立。本格的に存続に向け動き出した。

 自治会や近隣住民に園存続の必要性を説明して歩き、安全確保のための園舎補強工事の準備など、存続のために必要なことを一つひとつ解決していったという。3人や保護者の思いにより8月、自治会や地域住民の理解と協力が得られ、これまで通りの形で園が存続できることになった。

 3人は「園を作り上げた田中園長のようにはなれないかもしれないが、30年先も園が続くよう努力していきたい。まだまだ来年度に向けてやらなければならないことは多いが、園存続が決まりほっとしている」と話した。

 田中園長は「長年、地域の方々には本当に良くしていただいた。園の存続も受け入れていただき感謝している。3人には楽しく、良い園を作ってもらえたらうれしい」とほほえんだ。

 募集園児は3歳〜6歳。保育料月4万円(幼児教育・保育の無償化対象施設)。開所時間は9時〜17時。(鋤柄)