福生 石川酒造 免許がないのに、なぜワインが仕込めたのか【連載2】

前回までのあらすじ

石川酒造は今年6月にワインの製造免許を取得し、12月に出荷する。しかしそのワインは、昨年仕込んだものであった。なに!?免許取得前のフライング仕込みではないか。まさか!そんなことをしたら、日本酒やビールの免許も取り消しになってしまう。では石川彌八郎はどうやって免許取得前に合法的にワインを仕込むことができたのであろうか。

文・石川彌八郎(石川酒造株式会社代表取締役 蔵元)、ブルースハーモニカ奏者
文・石川彌八郎(石川酒造株式会社代表取締役 蔵元)、ブルースハーモニカ奏者

 皆さん、「密造酒」って聞いたことありますよね。そうです、酒類の製造免許を持たない者が造ったお酒です。これは違法です。罰せられます。お酒を製造するには、必ず免許が必要です。

 お酒と言っても、日本酒、ビール、ワイン、焼酎などいろいろあります。酒税法ではこれらを「品目」と呼び、品目ごとに製造免許が必要なのです。石川酒造が持っている免許は、清酒(日本酒)、ビール、発泡酒、リキュール、スピリッツでした。それに加え、2022年6月にワインの免許を取得したのです。

 しかし、僕は免許付与以前の2021年秋にワインを仕込みました。普通に考えれば違法ですが、合法なんです。その理由を以下に書きます。

 酒類の製造免許には「製造場」という概念があります。簡単に言うと、お酒を造って良い場所と悪い場所です。石川酒造は敷地内の「酒類の製造場」に定められた場所でのみ製造が許されています。実は隣接している「ビール小屋」や「食道いし川」や「酒坊 多満自慢」は醸造場から除外されているので、たとえ石川彌八郎であろうと、ビール小屋で酒類を製造した場合は違法となります。

 逆に、ビール小屋の支配人が石川酒造の「製造場」で酒類を製造した場合は、違法となりません。製造免許は人や会社に加えて、場所にも下りると考えてもらえば分かりやすいでしょう。なので、石川酒造に関わらない第三者が石川酒造の製造場内で製造したとしても問題ありません。

 ではその際、石川酒造の負うべき責任は何か。それは、その酒類の製造にあたっての「製造方法申告書」「原料の受払簿の記帳」などのさまざまな記帳や申告の義務等、その酒類が出荷された場合の酒税の申告・納付、出荷された製品に対しての製造者としての責任等です。

 つまり、第三者の場合は十分に信頼があり、尚かつ酒類製造の知識や経験を有し、酒税法をはじめとした関連法規と酒類業界に明るい人しか考えられません。

 さあ、僕が昨年どのようにして合法的にワインを仕込んだか、わかってきましたね。

 僕がワインを仕込んだ場所は、石川酒造ではなくほかのワイナリーだったのです。さて、それはどこのワイナリーでしょうか。それはまた来週。