私立小学校という選択 〜デジタル人材の育成〜 下:菅生学園初等学校 教頭 村田隆一
公立・私立関係なく、学校には重大な役割があります。教育基本法第一章にはこう書かれています。
(教育の目的)
第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
つまり、民主主義とは何なのかを子ども時代にしっかり学習することが教育の第一義です。英語や数学の偏差値を上げろとは書いていません。
民主主義とは単なる多数決ではありません。少数意見や弱者の意見に耳を傾け、それらの方も納得して事を進めることが民主主義です。こうした考えができれば、ロシアによるウクライナ侵攻のような戦争はなくなるはずです。いじめの問題も同様です。
しかし、この第一章第一条に書いてあることをほとんどの学校が軽視、いやむしろ忘れています。
いわゆる特別活動(通称特活)といわれる学習ですが、私の知る限り日本中の大学に特活を研究している人は数人しかいません。本校では1年生から6年生までを縦割り班で分け、あえて異年齢で行動させます。そうすることで、非認知能力、つまり生きる力が身につきます。社会に出れば、当然異年齢の世界ですので、その訓練をします。
生きる力を本校では次のように考えます。
・相手の事情に配慮した行動がとれる力
・人と協働するためのコミュニケーション能力
・さまざまなストレスから立ち直る力
・未知の事柄に立ち向かうチャレンジ精神
本校ではこれらの教育活動を通して、お預かりしたお子さまが幸せで豊かな人生を送る資質をしっかり身につけていきたいと考えます。その子が大人になった時、世の中のために奉仕してくれれば、教師としてこの上ない幸せであります。
これからの時代、多くの仕事がAIやロボットに取って代わられるでしょう。コンピューターを操作する能力とデータを分析する能力は必須となります。一方、諸刃の剣であるデジタル機器を操作するのはあくまでわれわれ人間であり、そこには確かな人間性・道徳心が求められます。
この教育はなるべく早いうちが有効です。本校では小学校1年生から一人1台のタブレットを持たせていますが、免許制度としています。家庭も含め普段の使い方により5段階の免許となっており、インターネットの接続条件や使用できる時間帯の制限などが変化します。これらを通して、子どもたちには正しいスキルを身につけてもらいます。
21世紀、気迫をもって生きていける人材を菅生学園は世に送り出します。(完)