奥多摩町 沿線まるごとホテル ツーリズム・アワードで最高賞 過疎地域の課題、顧客価値へ転換
全国各地で地域活性化やビジネス創出支援に取り組む「さとゆめ」とJR東日本の共同出資会社「沿線まるごと株式会社」(奥多摩町棚沢、嶋田俊平社長)がこのほど、「第7回ジャパン・ツーリズム・アワード」で最高賞の「国土交通大臣賞」と「学生が選ぶジャパン・ツーリズム・アワード賞」をダブル受賞した。
ジャパン・ツーリズム・アワードは公益社団法人日本観光振興協会、一般社団法人日本旅行業協会、日本政府観光局が主催。ツーリズムの発展や拡大に向け、持続可能で優れた取り組みを行う国内外の組織・団体・個人を表彰している。コロナ禍で3年ぶりの開催となった今回は140件の応募があった。
受賞したプロジェクト「沿線まるごとホテル」は、無人駅の駅舎などを「ホテルのフロント」として活用。さらに、沿線の古民家(空き家)を「ホテルの客室」に改修し、地域住民とともに接客・運営することで、「沿線地域全体をひとつのホテル」に見立てるというもの。
第1弾として昨年6月、鳩ノ巣駅に「沿線まるごとラボ」を開設。観光情報の発信、地域の協力事業者らと体験ツアーやイベントを企画するほか、まもなく古民家の改修工事が始まり、来春にはレストランとサウナ施設を開業する。その後も客室を整備し、古民家ホテルを開業予定だという。
さらに青梅線沿線の古民家を順次改修し、5〜8棟の宿泊施設の開業を目指している。「ラボ」はそれらのホテルのフロントの役割を担っていく。長期的な展望では、「沿線まるごとホテル」等の地域事業モデルを青梅線以外の地域でも検討し、2040年までにJR東日本管轄エリアの30地域以上で地域特性に応じた事業創出を目指す。
国土交通大臣賞では「空き家をホテル、無人駅をフロントに見立てるなど、地域課題を顧客価値に転換し、魅力につなげている」こと、学生が選ぶジャパン・ツーリズム・アワード賞では「他の過疎地域においても応用可能であり、公共交通維持のために有効かつ革新的な解決手段になり得る」ことなどが受賞理由に挙げられた。
嶋田社長は「名誉ある賞をいただき大変光栄であると同時に、驚きと責任の重さを感じている。『沿線まるごとホテル』は過疎高齢地域の課題を価値に変換、提供するプロジェクト。青梅線沿線の皆さまと共に、新たなツーリズム創出にまい進したい」としている。(鋤柄)