愛着ある一台もっと楽しむ ピアノ調律・修理工房ピアノソフィ 日の出町で開業
ピアノ調律師の依田純一さん(41)が日の出町大久野の自宅一室に設けた小さなショールーム兼工房には、1800年代に作られたドイツ・ベヒシュタイン社製とフランス・プレイエル社製の2台のピアノが置かれている。どちらも依田さんが所有しているもので、「直せば、枯れた良い音がするんです」と愛おしそうに鍵盤に触れる。
依田さんが営むピアノ調律・修理工房「Pianosophyピアノソフィ」が10月1日、開業した。14年の他社勤務を経て身につけた技術とネットワークを生かし、西多摩地区を中心に事業を展開していく。
幼少期からピアノ、ギター、トロンボーンなど楽器に触れ、大学時代はロックバンドの活動に没頭。生活の中に常に音楽があった。職業を考えたとき唯一浮かんだのも調律師。迷わずその道に進み、公共施設のピアノメンテナンスを行う会社と海外ピアノメーカーの2社に勤務。より多様な経験を求めて縛りの少ない自営スタイルに転身した。
1970年代、どこの家庭にもピアノがあった時代から、本当に好きな人が所有する時代へ。調律を依頼する人のレベルは高くなっていると感じる。目指すのは、メーカーごとに異なる音色・製造コンセプトや構造を理解した上で、ユーザーが求める音に近づける調律。特に古いピアノの音を好む依田さんは、修復を通じて古いものに価値を認める文化を広めていきたいという。
「ピアノ一台一台に、作られた当時の音楽文化や技術の歴史がタイムカプセルのように詰め込まれていて、その全てが音色に表現されている。ピアノは世界の宝物。現代に生きる私たちには、捨てずに直し、使いながら後世に残していく使命がある」と、自身の仕事の意義を語る。
価格等詳細はウェブサイトで。インスタ(@pianosophy.tokyo)で自身の演奏をBGMに日々の作業風景を紹介している。問い合わせは080(2038)7057まで。(伊藤)