紙加工に新たな可能性を クリエイティブ思考で商品開発

たまに出会う

西多摩から少し視野を広げ、読者の皆さんの生活圏内である南・北多摩の魅力的な企業や人、取り組みなどを紹介する新連載を始めます。

福永紙工(立川市)

 1枚の円形の紙が器状に形を変える「空気の器」=上写真、100分の1スケールの建築模型用添景セットを展開する「テラダモケイ」など、ユニークな紙製品を手がける福永紙工(立川市、山田明良社長)。創業60余年で培った技術力を生かし、さまざまな挑戦を続けている。

テラダモケイ

 近年は商品パッケージそのものに新たな価値を創造する「UNBOX」プロジェクトに注力。「箱を再発明する」をテーマに掲げ、同社の高い構造設計力の可視化に取り組んでいる。一種類の展開図で内容物の高さに応じて深さを変更できる箱、トレーやショッパー等に展開できる箱などを開発。ISSEY MIYAKEや中川政七商店などの商品パッケージに採用されている。

 1963年に創業。名刺やはがき、封筒などの印刷、菓子箱等の製造を手掛けてきた。アパレル会社に勤務していた山田社長は93年、義父が創業した福永紙工に入社。仕事に取り組む中で、顧客からの版下を印刷加工し、納期通りに納める下請け仕事だけでは会社の継続が難しいと考えるように。また、自社の優れた加工技術を生かしたクリエイティブな事業を展開したいとの思いもあった。

 新規事業を模索し、2006年に製造技術とデザイナーの斬新な発想を合わせて紙の可能性を追求するプロジェクト「かみの工作所」を開始。1枚の紙を「道具」にすることがテーマで、「壺」や「時計」などの商品を開発。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のエンブレムデザインを担当した野老朝雄氏との商品も発表した。

 11年には建築家、寺田尚樹氏と「テラダモケイ」を発足。世界の都市編やスポーツ編、樹木編など数々のアイテムをシリーズ化。ほぼ毎月新製品を発表し、現在は100種を超えるヒット商品に。その後も年間6組ほどのクリエーターとタッグを組み製品を開発。22年には300種を超える自社製品を販売する「SUPER PAPER MARKET※」を立川市の複合施設内にオープンした。

※「SUPER PAPER MARKET」は2024年5月に本社工場内に移転。

数多くの商品が並ぶSUPER PAPER MARKET

 全国のインテリアショップやミュージアムショップなどへ商品を流通させる同社コミュニケーションディレクターの山田祥子さんは「デザイナーへの信頼が無ければ良いものづくりはできない。アイデアを大切にして作ってみることで、本当に良い商品ができる。売る先に合わせてものを作るのではなく、できた商品をどこに売ろうかと考える。そういう姿勢が新事業の成功につながったのだと思う」と話す。

 商品ラインナップは公式ウェブサイトから。(https://www.fukunaga-print.co.jp)

「SUPER PAPER MARKET」の営業時間は11時〜16時。営業日はインスタグラム(@superpapermarket)で要確認。 (鋤柄)