「雪おんな」発祥の地は青梅? 「雪おんな縁の地」 ラフカディオ・ハーンの「怪談」
先月22日、青梅に約30㌢の大雪が降った。本社(同市長淵7丁目)近くの多摩川に架かる調布橋袂にある石碑「雪おんな縁の地」にも雪が降り積もった。
碑は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の小説「雪おんな」の舞台は青梅だった(?)として平成14(2002)年に横川秀利さん(現・赤塚不二夫会館長)ら地元有志が建てたもの。この青梅説は町おこしの格好の話題として当時、関係者の間で大きな反響を呼んだ。
青梅説はその数年前、『怪談』の序文に着目したことが発端だった。序文には「『雪おんな』は、武蔵の国、多摩郡、調布の農夫が話した、村に伝わる昔話を基にして書いた」とあり、序文通りなら、「雪おんな」の原話の舞台は青梅の旧調布村(現・千ヶ瀬・長淵一帯)ということになる。
さっそく横川さんを団長とする「雪おんな探偵団」が結成され、原本の読み込みと青梅との比較、小泉家との連携、青梅の雪おんなに関する昔話の収集などが進められた。
その結果、長男の小泉一雄さんの著作『父、八雲を思う』の中から「ハナという調布村出身の農家の娘が屋敷に奉公し、父親の宗八も出入りしていた」という貴重な箇所が確認された。
また、郷土史家の齋藤愼一さんらにより「『雪おんな』と青梅の風土」と題したシンポジウムが、八雲の曾孫で八雲記念館顧問の小泉凡さんを招き、千ヶ瀬の宗建寺で開かれた。
住まいと山の間に大きな川があって渡し場(千ヶ瀬の渡し)があること、江戸へ奉公に行くことなど、物語の内容に青梅地方の生活習慣や自然背景と極めて類似する点が確認された。一方、宗八らしき農夫が語った昔話が青梅地方では確認されなかったことも指摘された。
これらの事情から碑建立に際し、碑の文字が「発祥の地」という断定的なものでなく「縁の地」といった曖昧な表現になったと思われる。碑は横長の黒御影石で、碑面には「縁」の文字、裏面にハーンの著書『KWAIDAN』(怪談)の表紙が彫ってある。ギリシャ生まれのハーンは明治23(1890)年に来日、島根県松江の教師を経て、小泉セツと結婚し日本に帰化。牛込に住み、『怪談』を出版した。(吉田)