あきる野 養沢ヤギチーズ 本格販売スタート

5月初旬にヤギの出産が一段落した養沢ヤギ牧場(あきる野市養沢)で、ヤギチーズの仕込みが始まった。準備段階の昨年はイベントなどでのスポット販売が主だったが、今年は乳が搾れる12月ごろまで通して提供できる見込みだ。

牧場を営むのは、同市入野出身の堀周さん(31)。少年時代から自分の腕を頼りに体ひとつで生きていく生活にあこがれ、大工やボクサーを目指した時期もあった。「会社などに依存せず、自立した生活を確立したい」という人生のテーマを、ヤギチーズで実現しようとしている。

堀さんは理系の大学を卒業後、3年間の会社勤めを経て家族規模での牧場経営を志し、2016年に北海道に渡った。農事組合法人「共働学舎」でチーズづくりを学び、経営スタイルを思い描く中で、ヤギチーズに目をつけた。日本ではまだ生産量の少ないヤギチーズの収益性に加え、山間地でヤギを飼うことで山を有効活用できるという点に魅力を感じた。

消費者の多い関東圏での開業を目指し、実家に近い場所から候補地探しを始めた。縁あって養沢に山付きの住居が見つかり、昨年1月に妻麻衣さんかける(32)と架くん(4)、湊くん(1)、仁哉くん(1)の3人の子と共に移住。空き屋に住み、アルバイトで生計を立てながら乳を搾るためのヤギを育て、木工作家の父、昇さんの手を借り、ヤギ小屋とチーズ工房をつくった。

この春、牧場は出産ラッシュで10頭の子ヤギに恵まれ、乳を出す成ヤギは6頭に増えた。堀さん自身も4月にバイトをやめ、本腰を入れたチーズづくりがいよいよスタートした。

堀さんは、朝晩合わせて1日20㍑ほどの乳を手搾り。その乳を加熱・殺菌後、乳酸菌などを混ぜて3日置き、手で丸めて1週間ほど熟成させるとチーズが完成する。クリーミーで、独特のさわやかな風味のあるチーズはパンやサラダだけでなくベリー類やはちみつにもよく合い、スイーツの素材としても楽しめる。

「どうやってうまく売るかより、ヤギの飼育やチーズ製造など職人としての仕事の部分により多くの力を注ぎたい。そのためには発送に時間をとられる通販よりも、近くの方に買いに来てもらいたい」と、まずは商圏を広げずに販売していきたいという。

養沢ヤギチーズ

1個1080円。JAあきがわの直売所「愛菜」で扱うほか、営業再開後は瀬音の湯でも販売する。(伊藤)