玉堂の愛、溢れる作品展 秋の玉堂画と玉堂の贈り物展 玉堂美術館で12月5日まで

出展作品の「みのり」

玉堂美術館(青梅市御岳、小澤芳郎主事)で12月5日まで開催中の「秋の玉堂画と玉堂の贈り物展」に、金色に輝く稲穂を描いた「みのり」(1955年)という作品が飾られている。余白が少なく、高価な金の絵の具をふんだんに使った作品は、玉堂の残した多くの作品の中でも珍しいと言われている。この絵には玉堂の門弟で心眼の画家、菊池良爾との温かいエピソードが残されている。

青梅市で活動していた菊池は将来を嘱望された画家であった。だが戦後、病を患い視力を失った。画家の道を諦め、故郷の秋田に帰ることになる。

3年後、玉堂のもとに、菊池から故郷の祭りの情景を描いた絵が届く。わずかな視力を心眼で補い描いた絵に玉堂は心奪われたという。

玉堂は菊池を推薦し、日本橋三越で菊池良爾日本画展「秋田豊年踊を主題として」を開催した。その展覧会に玉堂が賛助出品し、華を添えたのが「みのり」であった。

玉堂らしからぬ描き込みの多さや、金をふんだんに使った背景には、画家として再出発した弟子の姿を喜び、祝いと励ましの思いが込められているのではないかと言われている。展覧会で成功を収めた菊池は青梅に戻り、生涯絵を描き続けた。

他にも、玉堂が大切にしていた人たちに贈った作品が飾られている。それぞれのエピソードが丁寧に解説され、物語を読むように絵を見ることができる。

小澤主事は「玉堂は友人や知人の門出に多く絵を贈りました。それぞれに玉堂の願いが込められています。そんな玉堂の温かい人柄に触れてもらいたい」と話す。

開催時間は10時~17時(入館は16時30分まで)。月曜定休。入館料は大人500円。問い合わせは0428(78)8335まで。(鋤柄)