青梅初のクラフトビール 武藤治作酒店 新名物に ペットボトルで提供へ

湯に麦、玄米を加えた釜を撹拌する武藤さん
湯に麦、玄米を加えた釜を撹拌する武藤さん

 青梅の新たな名物を作ろうと、武藤治作酒店(青梅市木野下、武藤一由店主)が市内で初めてクラフトビールの製造に乗り出した。今月中の発売に向け3日、自家栽培の玄米を使ったビールを仕込んだ。

 同店はコロナ禍で収益の柱である飲食店への卸売りが激減。店主の武藤さん(47)は、業績回復の一手としてクラフトビールを思いついた。いつか自分でビールを造ってみたいという漠然とした夢が、コロナによって突如、現実味を帯びた。

 国の事業再構築補助金を活用し、店の一角に約11平方㍍の小さな醸造場を整備。ビール製造免許を取得するなど1年がかりで準備を整え、晴れて仕込みの日を迎えた。

 ビール造りは青梅駅前でクラフトビールを提供する「青梅麦酒」を経営していた折に携わったことはあるが、一人で仕込むのは初めて。当時、指導を仰いで以来親交を深めてきたバテレ(奥多摩町)の辻野木景醸造長に立ち合いを依頼。湯に麦と地元産の玄米を加えて加熱し、マッシングと呼ばれる穀物のデンプンを糖化させる作業を行った。小さな醸造場は麦芽の甘い香りに包まれた。

 今後、順調に発酵が進めば、10日余りですっきりとした味わいのペールエールに仕上がる。醸造量は約200㍑を見込む。

 武藤さんはこれを500㍉㍑のペットボトルに詰めて販売するという。瓶や缶にしない理由は、ちょこちょこ飲めるから。「味わいを楽しむクラフトビールは炭酸が抜けてもおいしく飲める。山歩き、川遊びのお供に、ぜひクラフトビールを持ち歩いてほしい」と、アウトドアの聖地青梅の新たな名物に育てていきたいという。

 作業を見守った辻野さんは、「クラフトビールを造ってみたいという人は何人もいるが、武藤さんのように行動に移す人は見たことがない。今後が楽しみです」とビール仲間の誕生を歓迎した。(伊藤)