日の出町の陶芸家、岡野さん 窯、土、薪に人生を捧げ 12日まで国立で親子展

法世さん作の自然釉削目壺(右奥)、寛子さん作の色絵皿(中央)、良枝さん作の彩色水差し(左)

日の出町平井の陶芸家、岡野法世さん(84)と岡野さんの双子の娘、櫻井良枝さん(福生市志茂)、髙木寛子さん(あきる野市五日市)の展覧会「岡野法世親子展」が5日~12日、国立駅南口から徒歩5分ほどの場所にある画廊「岳」と同画廊の2階galerieコロンの2会場で開催される。

自宅に併設されたギャラリーで、法世さん(中央)、良枝さん(右)、寛子さん

法世さんは釉薬を使わず、薪窯でじっくりと焼き上げた、高さ40㌢ほどの大型の壺を中心に、同様の製法で作った花器を30点ほど展示。信楽の赤味のある土色に、自然釉の淡い緑色が美しい。

良枝さんは、松灰釉の自然な色合いにモダンな文様をあしらった水差しや香合などを、寛子さんは白磁器に鮮やかな色彩で上絵付けした皿やカップなどの食器を、それぞれ80点ほど展示する。

法世さんは武蔵野美術大学の教員養成課程で美術全般を学ぶ中で、陶芸に興味を持った。卒業後、岐阜県多治見市の陶芸工場で基本を学びたいと働き始める。2年後、京都で陶芸家、岩渕重哉氏を師事し、住み込みで修行を積んだ。

1965年に福生市の実家に築窯し、作家活動を開始。自作の灯油窯で制作を続けるも、住宅地での制作には制限があった。より自由に制作できる場所を求め、日の出町に移転。その頃に双子の姉妹が誕生した。

「人生を窯、土、薪に捧げてきた」と法世さん。窯は自作で、50年以上のキャリアの中で、理想の焼き上がりを求め幾度となく作り替えた。土は信楽の中でも鉄分の少ない物を厳選する。薪には赤松を使い、不純物を取り除くため、丁寧に薪をワイヤーブラシで磨いてから火にくべるというこだわりようだ。

良枝さんは武蔵野美術大学で油画を学んだ後、法世さんから陶芸を学んだ。寛子さんは東京芸術大学で陶芸を学び、大学院も修了。2人とも大学を出てからは法世さんと同じ工房で制作を続けている。

親子展の開催は、今回で6回目。法世さんは「娘たちにこんな大変な仕事をさせたくないという思いもありましたが、一緒に仕事ができること、展示できることはうれしいですね」と微笑んだ。

開催時間は11時~17時(最終日16時)。問い合わせは042(576)9909まで。(鋤柄)