二重作櫻 寿ぎのうるし展 13日から青梅の繭蔵で

出展作品の香合「神 箔文」

青梅市日向和田で50年以上にわたり漆芸家として活動する二重作櫻さん(78)の展覧会「二重作櫻寿ぎのうるし展」が13日~23日、ダイニング&ギャラリー繭蔵(同市西分町、庭崎正純オーナー)で開催される。原木の乾燥から粗彫り、下塗り、絵付けまで、1つの作品を仕上げるのに3年以上かかるという酒器、飯椀、汁椀など、100点近い作品が並ぶ。時間経過によって色が鮮やかに発色するという漆絵も展示する。

仕上げ中の作品を背にする二重作さん

会場では、未使用の椀と自身が30年近く愛用する椀を並べて展示。使い込まれた椀は、独特の光沢感や透明感が増し、蒔かれた金箔がくっきりと浮かび上がっている。「漆は時間が経てば経つほど硬くなる性質がある。硬くなれば輝きが増す」と二重作さんは話す。

1968年に東京芸術大学工芸科を卒業。71年に同大学院漆芸専攻を修了。在学中から磯矢阿伎良氏を師事し、中野区の自宅から、磯矢氏の工房朱文筵(同市梅郷)に通い修行を積んだ。73年には日向和田に移転し、工房を開設した。

朱文筵や二重作さんが手掛ける作品は、漆器の産地とは異なる方法で制作される。産地では、木地師、塗師、研ぎ師、蒔絵師とそれぞれの職人が分業し、1つの作品を仕上げる。だが二重作さんらは、全ての工程を基本的に1人でこなす。

「産地の職人に比べて技術は劣る部分はあると思う。だが、少しの歪みやムラ、そういった部分に温かみがあり、製品にはない美しさがある」とその理由を説く。

「漆器は高価だが、特別な時に使うのではなく、毎日の食事に使ってもらいたい。丁寧に洗い、ふき上げることで何十年も使うことができ、使うたびに美しさが増す」と漆器の魅力を語る。

会期中、娘の梓さんの銀と漆のジュエリーも展示される。開催時間は11時~17時。16日休廊。問い合わせは0428(21)7291まで。(鋤柄)