国立奥多摩美術館館長の他の美術館に行ってきた! 「ミニマル/コンセプチュアル」

 11月30日(火)曇り。千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館に行ってきた。ここは、印刷インキなどを扱う科学メーカーの「DIC株式会社」が母体となり運営されている私立美術館である。今回はミニマル/コンセプチュアルという美術における大きなトピックを扱った企画展が行われていた。

 ミニマル・アートとコンセプチュアル・アートという潮流は1960年代に生まれたらしい。そしてそれらを同時代的に紹介していて、 ドイツ・デュッセルドルフに拠点を持つフィッシャー夫妻のコレクションを中心に展覧会は構成されている。

 ミニマル・アートには、丸、三角、四角、点、線、面などの、物事を構成する最小限の要素をシンプルに用いた作品が多い。正直、作品を前にして、あっけらかんとしたそっけなさを感じることも多い。しかし、それゆえにミニマルアートはさまざまな個人の思考を入れられる器のような機能を有していると感じる。

 そんなミニマルアート作品は、夜空の月を見てその形に思いを馳せるように、海辺で水平線を見て人間の存在を超えた大きな意図を感じるように、とりとめなく鑑賞すると良いと思う。

 コンセプチュアルアートを見る時には、大工仕事などで使われる「段取り8分、仕事2分」という言葉を思い出す。物事を行う時、計画がちゃんと出来ていれば、手を動かす作業は全体の2割程度の要素だ、という意味の言葉。コンセプチュアルアートには、その極端な「段取り10分、仕事はそのナリで」という言葉を思う。

 理屈は練り込まれているが、その理屈の表れとしての作品自体はそっけなかったりする。鑑賞する時は、物自体を見るよりも作者の思考を想像して追いかけてみると面白くなる。

 今回は1960〜70年代の、美術の潮流が、さまざまな作家とフィッシャー夫妻によって形作られていく変遷をなぞっていく展覧会だった。だから作家と夫妻の間で交わされた手紙や関連資料も多かった。観るというより、読むという要素が多く、途中で閉館の音楽が鳴りだした。急いで最後まで走って観た。時間に余裕をもって足を運ぶ事をおすすめする。なによりもまず、ここの美術館のコレクションとその見せ方がとっても素敵だ。(佐塚真啓)

「ミニマル/コンセプチュアル」

DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)

会期:10月9日 〜2022年1月10日

入場料:大人1300円

東京駅から高速バスで60分