西武信用金庫 女性3人を部長に起用 積極登用で組織の活力高め
女性の個性と能力が十分発揮できる社会の実現に向け、積極的に取り組む西武信用金庫(髙橋一朗理事長、本店・中野区)は昨年10月、3人目の女性部長を誕生させた。髙橋理事長はじめ現経営陣から部長に抜擢された3人にこれまでの歩みや女性職員への思い、今年の抱負などを語ってもらった。(伊藤)
勤続35年超
3人は、事務部長を経て昨年10月に地域協創部長に就いた川津美加子さん(55)、同時期に事務部長になった佐藤弘美さん(57)と、2019年5月から個人推進部長を任される山口敬子さん(54)。いずれも高校卒業後の1980年代に入庫し、勤続年数は35年超。周囲から「努力家」「困難を前にしてもくじけない」などと評される。
3人の場合、入庫時にそれぞれ100人ほどいた女性の同期職員が今では5、6人残る程度。「結婚、出産などを機に続けたくても続けられない人もいたはず」と3人は、さまざまな事情で退職していった女性職員に思いをはせる。一方で同時代を生き、同じような時期に部長に引き上げられたほかの2人には「同志」のような思いがあり、その存在を互いに心強く感じているという。
自分たちがロールモデルに
「仕事を続ける女性が少なかった私たちの時代にはロールモデルがおらず、どこを目指していいかわからなかった」という山口さん。年金の営業に長く携わり、「知識が人を助ける」ことを実感。
第3子の育児休業中に社会保険労務士の勉強を始め、3年かけて資格を取得した勉強家だ。その後も「今の仕事をより良く、より楽しくしよう」とチャレンジを続け、宅地建物取引士の資格も取得。出向先で不動産信託事業に携わるなどキャリアを積み上げ、気づくと自身が次世代女性のロールモデルになっていた。
佐藤さんはかつて、後輩の女性職員に「『私もやってみたい』『私にもできるかも』と思ってもらえるように副支店長に立候補した」。女性の社会進出を後押しする社内制度が整う中、「後輩たちには性別にとらわれず、どんどん挑戦してほしい」との思いから先陣を切ったという。
成功も失敗も全て、等身大の自分をさらすことで女性職員を勇気づけ、「弘美さん」と慕われる存在になった。
川津さんは人事部13年5カ月、事務部14年6カ月など本部勤務が長く、支店の職員から常に背中を見られる立場。その時々に良い上司に恵まれたこともあり、性別を理由に理不尽な思いをした記憶はないという。「西武は昔から男女の差なく、下の者の意見を聞こうという風土があった」といい、「西武に育ててもらった」との思いが強い。年齢的にも若手職員のお母さん的存在として、後輩たちを支えていく。
卯年、各部署の取り組みは
卯年の今年、山口さん率いる個人推進部ではコロナ禍で約3年間、控えてきた個人向けの楽しいイベントを再開。証券会社出身のシニアスタッフとベテラン女性職員が連携し、地域向けの金融資産リテラシーを高める取り組みにも注力するという。
昨年10月に新設された川津さんの地域協創部では協同組合である信用金庫の「互いに助け合う」という理念のもと、街づくり支援、創業支援、寄付・基金事業などを通して地域とのつながり強化を図る。地域との取り組みについては各支店から自発的に企画の提案が上がってくることを期待したいという。
佐藤さんの事務部では業務のDX化を進める一方、主に高齢の顧客に対する効率的で温かみのある対面業務の手法を模索し各支店に浸透を図る。「バックオフィス的な地味な部署」ではあるが、姉御気質を発揮し各店をフォローしていくという。