山梨中央銀行製造業PT NISSYO工場見学へ 人づくり、生産性向上の工夫学ぶ

工具の紛失を防ぎ、整理整頓を促す工夫を解説
工具の紛失を防ぎ、整理整頓を促す工夫を解説

 羽村市に支店を置く山梨中央銀行(本店・甲府市)製造業推進プロジェクトチーム(PT)は、融資先でありトランスや電源装置などを設計・製造するNISSYO(同市神明台、久保寛一社長)のベンチマークツアーを企画。4月24日、PTの15人が同社を訪ねた。

 NISSYOは1967年、青梅市で創業。89年、現在の久保社長(66)が先代から会社を引き継ぐと同時にトランス製造業に転換。社員教育とDX化に注力して生産性を高め、20年間で売上を10倍(2022年度38億円)に激増させた。17年、羽村市に移転。以前の4倍の広さの工場に。22年にはDX推進の準備が整っていることを国が認定する「DX認定事業者」に三多摩の中小企業として初めて認定された。業績アップにつながるさまざまな工夫が注目され、見学希望者の絶えない工場となっている。

 ベンチマークツアーでは、社長自ら案内役を務め、工場内の着眼ポイントや取り組みの意図・成果などを解説した。どの部門も整然としており、従業員のあいさつが徹底されていた。

経営計画書の重要性を説く久保社長
経営計画書の重要性を説く久保社長

 久保社長は「何も知らないところからのスタートだった」と、電気エンジニアとして会社を引き継いだ当時を振り返り、「自分が経営を勉強しなければ会社は伸びないと気づいて勉強を始めたら、社長だけが学んでもダメなことがわかった」と、社員教育に着目した経緯を伝えた。

 昨年度はパートを含む従業員の研修費等に4200万円を投入。経営の肝である経営計画書は12年以降幹部が作り、社長がチェックする体制にして幹部の育成に努める。このほか上司との面談や社内飲み会・イベントへの参加回数が賞与の査定に影響する仕組みを作り、社内コミュニケーションを促すことで生産性向上につなげている。 

 こうした人づくりに重点を置いた経営に関心を抱く企業は多く、昨年度は89社が見学に訪れたという。同社の取り組みは久保社長の著書「ありえない!町工場」(あさ出版)に詳しい。

 工場見学を終えPTを率いる清水大学羽村支店長は「西多摩地区は都内でも有数のものづくり集積地。その中でも先進的な取り組みを行う工場を見学させていただいた経験は、大変貴重なものとなった。改めて決算書からだけでは読み取れない現場の姿をしっかりと整理して理解する重要性を感じた。微力ながら少しでも当地区でのものづくりを応援する銀行となれるよう頑張りたい」と述べた。(伊藤)