福生駅東口そば 創業70年 山上商店 ゆっくりとける氷屋の氷を

「夫婦二人で食べていければいい」と話す山上さんと妻の靖子さん
「夫婦二人で食べていければいい」と話す山上さんと妻の靖子さん

 福生駅東口から徒歩4分の場所にある山上商店は、燃料と氷の店。大きな塊を切り出して売る氷屋の氷は、梅雨明けから一気に需要が高まる。

 地下水を48時間かけて製氷する1本135㌔の塊を、製氷会社から仕入れる。製氷過程で不純物が取り除かれるため純度が高く、溶けにくい。注文に応じてカットして出荷。小売りは「一貫目」と呼ぶ約3・75㌕のブロック(1袋570円)、ウイスキーなどに使うロックアイス(2㌔450円)で販売。気温の低い朝4時半からカットし始める。

78年に導入した電動カッターで氷を切り出す
78年に導入した電動カッターで氷を切り出す

 山上さんは「家庭用と違い、氷屋の氷は硬くてとけ方がゆっくり。バーテンダーが使ってくれる。飲み物が薄まらず長く楽しめるので家庭でもおすすめ」という。

 店は父甚作さんが1953(昭和28)年に燃料屋として始め、今年創業70年。57年から氷を取り扱い始めた。昭和30年代は木製の冷蔵庫が主流で、氷屋は各家を巡回し冷蔵庫の氷を届けた。2代目の廣光さん(75)は中学生の頃から配達などを手伝い、大学卒業後に店を継いだ。

 ベトナム戦争中の60年〜70年代前半は、福生駅東口の飲食店街は米兵らで活気があり、1年中配達が忙しかった。当時、氷の切り出しはノコギリ。忙しい時は1日中、手作業で氷を切り続けた。

 70年代後半から、製氷機を設置する飲食店が増え、氷屋への注文は減っていった。西多摩の氷屋も減り、現在は数店が残るのみとなっている。

冷凍庫には135㌔の氷が並ぶ
冷凍庫には135㌔の氷が並ぶ

 コロナ禍で飲食店の需要が激減し、氷が全く売れない時期があったが、常連店や自宅使いにと地元や近隣から通う客が支えてくれた。今年は各地で夏祭りが復活しており忙しくなりそうだ。

 山上さんは「夫婦2人が食べていければいいと続けている。体力のいる仕事。コロナ禍で筋肉が落ちたが、夏の忙しさを乗り越えたい」と笑顔で話した。

 営業時間は7時〜19時。日曜定休だが7、8月は無休。問い合わせは042(551)0703まで。(山石)