あきる野市 こもれびの郷  短時間パート導入で人材不足をカバー

取り組みを紹介する宮林理事長
取り組みを紹介する宮林理事長

 人材不足が著しい介護業界で、独自の勤務体系、育成システムを導入し、人の確保に一定の成果を上げている施設がある。あきる野市雨間の特別養護老人ホームこもれびの郷では、1日2時間〜6時間の勤務が可能な人を「短時間パート職員」として積極的に採用。正職員の補助的な仕事を担ってもらい、短時間の細かい仕事をつなぎ合わせて1日の仕事が完結する仕組みを取り入れている。

 同施設は定員85人の中規模な老人ホーム。10年ほど前、退職者が続き、新規採用者が定着しないという危機的な事態が重なった時期があった。理由を分析してみると、「8時間の勤務時間が長すぎる」「仕事が難しい」といった声が目立った。

 退職者の声を受け、当時、勤務歴10年ほどの中堅だった宮林大輔理事長(53)はプロジェクトチームを発足した。宮林理事長は、これまで仲間と少しずつ取り組んできた業務改善のノウハウや職場の課題などを整理。業務を127の項目に区切り、難易度に沿って10段階にランク分け。このうちシーツ交換や掃除など低ランクの作業を組み合わせて2時間の仕事を作り、1日2時間勤務を導入した。1項目につき原則10回正職員が指導し、作業の定着を図るなど育成にも力を入れる。

 現在、24人の正職員(ケアワーカー)に対し、短時間パート職員は28人。近隣の主婦も多く働く。同施設では近隣660世帯に月刊広報紙を配布、施設内の明るい話題を発信している。地道な広報活動により施設名や良いイメージが浸透したためか、短時間パートの求人に関心を示す地元の主婦層が増えているという。

 宮林理事長は「働き手の不足する時代に、ここで働きたいと思ってくれた方々は、それだけで貴重な人材。働く人の都合に合わせて仕事を組み立てるやり方は、集まってくれた人材を最大限有効活用する仕組みだと思う」と成果を実感。一方で、正職員の不足が改善されなければ抜本的な人材不足の解消にはならないことも認識し、次の一手を模索中という。(伊藤)