イタヤカエデの樹液煮つめ 檜原産メープルシロップ完成 せせらぎで販売
檜原村産のメープルシロップが完成し、村役場庁舎内の喫茶店「せせらぎ」と武蔵五日市駅前の「裏山ベース」で販売が始まった。先月24日には完成品のお披露目を兼ねたシロップ作り体験会(檜原村メープル研究会主催)が開かれ、近隣や都心部などから親子連れなど35人が参加した。
シロップ生産を行うのは、同村上元郷の鈴木留次郎さん(71)。村内の林業事業者やイタヤカエデの木を持つ山主などに声をかけ、3年前にメープル研究会(田中惣一会長)を立ち上げた人だ。昨年暮れ、自宅敷地内に加工施設「ひなたぼっこ」を建設し、加工を一手に引き受けることで商品化を実現した。
完成したシロップは初期の試作品と比べ格段に雑味が少なく、色はきれいな琥珀色。自信をもって販売できる品ができた。価格は100㍉㍑2000円(税込み)。他の国産品の半値に近い破格の安さに抑えた。
「他産地並みの値段で」という声もあるが、「高すぎて売れなくては意味がないから」と鈴木さん。「シロップを通して檜原村の名が売れ、村に住みたいという後継者が出てくればいい。何かの形で村の活性化に役に立てば」と願う。「71年間お世話になった村に恩返ししたい」という感謝を込めた価格設定でもあるという。
ただ、後継者を育ててシロップ作りを継続するには、人件費も出ない価格では成り立たない。もともと林業の副収入になればとの思いから始めた取り組みでもあり、作業効率を上げて収益性を高めることは今後の課題だという。鈴木さんは樹液を数十分から数時間煮立てて糖度を高めたメープルサップの試作もし、来年以降の販売につなげたいという。 (伊藤)
*メープルシロップとは、カエデの樹液を煮詰めて作る天然の甘味料。糖度66度以上のものを言い、それ以下はメープルサップと呼ばれる。