奥多摩 鳩ノ巣駅「カフェ山鳩」 Uターンで想いを受け継ぐ
鳩ノ巣駅を降りるとすぐに、かわいらしい鳩の絵の丸い看板が見える。ここは奥多摩町棚沢のカフェ山鳩。原島俊二さん、さとみさんが店を切り盛りしている。少し離れた場所では山荘も営んでいる。
この店を4月から手伝っているのが、俊二さんの長男・秀伍さんと妻秋恵さんだ。2人は2010年に結婚し、神奈川県藤沢市に暮らしていた。
秀伍さんは甲子園出場を目指し、15歳で奥多摩を出る。それから22年ぶりに奥多摩で暮らしている。15年ほど前に、母さとみさんから「あなたが継がないのであれば、いずれ山荘を人に貸そうと思っている」と言われた。自分の家が人のものになるというのは複雑な思いだった。その頃から、いつかは山鳩を継ごうと考えていた。長女の瑚子ちゃんが小学校に入学するタイミングに合わせ、奥多摩に戻ることを決めた。
2人には調理の経験があるわけではない。ゼロからのスタートだ。今は、料理の盛り付けから学んでいる。
店を手伝い始めた4月は、大変だった。新型コロナウウイルス感染拡大の影響で緊急事態宣言が出され、お客がパタリと来なくなってしまった。テイクアウトや、お弁当の配達を始めると、多くの注文が入り、今度は大忙しだった。本来なら一から料理を学べるはずだったが、そうした時間をとることもできなかった。激動の毎日だった。
山鳩を継ぐことを決めた頃は、事業を拡大することをイメージしていた。だが、奥多摩で暮らし、山鳩に来てくれる客と触れていく中で、考え方が変わった。これまでの客を大切にし、より満足してもらえるサービスを提供したいと考えるようになった。
後継者問題で、閉店せざるを得ない店が多くある。秀伍さんのような跡取りがいることは、山鳩にとってはもちろん、奥多摩の未来にとっても頼もしいことである。
カフェ山鳩の詳細は公式サイトから。(鋤柄)