染織家 河野香奈恵さん 青梅市 自分らしい表現を求めて

着物地や帯地を手掛ける染織家、河野香奈恵さん(35、青梅市西分町)は「織物は縦糸と横糸の関係だけで表現しなければならない。だがその制約の中に自由がある」と話し、現代的な感覚を取り入れ制作する。

河野さんの作品「カーニバルは続く」

「カーニバルは続く」と題した作品は、鮮やかに染められた赤、黄、青などの糸を織りあげ、熱気溢れる様子を表現した。「Blue eyed cat」は「猫が飼いたいと思っていた時の作品。シャムネコをイメージした」と話し、シルバーの濃淡の中にターコイズブルーのドットが規則的に配置されている。

糸をくくり、色を染め分けて柄を作る絣技法と、縦糸と横糸の交差で文様を作る綾織を主な表現方法として用いる。作品に使われる絹糸は、自身で染料を調合し染めている。

青梅市出身で、幼少期から絵を描くことが好きだった。中学を卒業後、女子美術大学付属高等学校へ進学。デッサンなどの基礎技術を学んだ。大学ではファッション学科を専攻するが、テキスタイル実習を受け「細部を突き詰めていくような作業が自分に合っていると思った」。2年次から工芸科へ転科し、染織を専攻。卒業制作で初めて着物と帯を織った。

卒業後、都心で刺繍レースデザイナーとして働き始めた。下着のレースから、アパレルブランドの生地に施す刺繍まで、さまざまな仕事を手掛けた。だが着物を織りたいという気持ちも持ち続けていた。織りを再開するには織機だけでなく、多くの道具が必要になる。働きながら資金を貯め、2014年に再開した。

その年、国画会が主催する国内最大級の公募展「国展」に初出展し入選。同展で、15年に工芸部奨励賞、16年に新人賞、17年に国画賞と、毎年受賞歴を重ね、19年には同会の準会員となる。

華やかな経歴をもつが「会にいると周りは作家一本でやっている人が多い。自分ももっと頑張らないといけないと刺激を受けた」といい、勤めていた会社を昨年8月に退職し染織家としての活動を本格的にスタートした。

「今はいろいろな表現を試したい。おばあちゃんになった時に、河野さんらしい作品だと言われるようになりたい」と話し、今後はインテリアや立体作品にも挑戦したいと語った。(鋤柄)