酒粕で土づくり 自作のコシヒカリで純米酒

発売中の「はむら」を持つ清水さん。冷やして飲むのがおすすめ

羽村市羽中で米農家を営む清水亮一さん(58)は、石川酒造(福生市)の杜氏、前迫晃一さんの協力で食用米のコシヒカリを使った純米酒「はむら」の醸造に挑戦している。3月に発売した今年の酒には、土づくりに酒粕を使った米を使用。フルーティで甘みが強く仕上がった。

同市観光協会の副会長も務める清水さん。市内に特産品と呼べるものがなく、何か作れないかと考えるうち、自作の米で日本酒が作れないかと思い浮かんだ。清水さんの水田は多摩川水系の上流部にある。同市は多摩川水系の地下水を飲料水に使っていることもあり、地酒が特産品になると直感した。

2019年、知人の紹介で前迫さんに相談。賛同を得て酒造りがスタートした。翌年、1㌧のコシヒカリから4合瓶2000本の日本酒を醸造。発売すると2カ月ほどで完売した。同年11月から始まったふるさと納税の返礼品として日本酒を扱ってもらうため、製造を続けることにした。

今年の米作りでも4000平方㍍の水田に酒粕を2㌧投入した

酒粕を肥料に使おうと思ったのは、日本酒の生産地として有名な福島県会津市で「昔は米の肥料に酒粕を使っていた」という話を聞いたことから。「もともと米からできた酒粕なのだから、混ぜても悪いことは起こらないだろう」と話題作りに始めた。

できた米の味の違いに前迫さんが気づいた。研究機関に分析依頼すると、日本酒の香りを生み出す「ロイシン」が通常の米より10倍多く含まれていた。清水さんが完成後の日本酒を飲み比べると、前年度の酒より香り高く感じたという。

清水さんは「個人農家の米を受け入れてくれた石川酒造には感謝しきれない。今後は大吟醸を作るため、米の品質を上げることが目標」と意欲を話した。

「はむら」は4合瓶1760円。観光協会(同市羽東)、市内の酒販店で購入できる。(藤野)