あきる野でH.U.Bioness Complexが1月稼働 H.U.GROUP HOLDINGS 竹内成和社長に聞く

上空から見たH.U.Bioness Complexの全景。敷地約3万7000坪

 臨床検査業界におけるリーディングカンパニーのH.U.グループホールディングス株式会社(本社・新宿区)が基幹施設と位置付けるH.U.Bioness Complexがあきる野市引田に完成し、1月から稼働する。約3万7000坪の敷地に検査ラボ棟、R&D棟など4棟を備え、IT、AIを活用した全自動の検査体制で業界をリードしていく。約1000人の従業員が勤務する市内最大の産業施設ということもあり、多くの市民が関心を寄せている。同社のあきる野での事業展開や地域との関わりなどについて代表執行役社長兼グループCEOの竹内成和さん(68)に聞いた。(聞き手は伊藤寛子)

世界最大級の全自動検査ライン

ーー八王子市にある主要な検査施設(八王子ラボ)の機能を丸ごとあきる野に移される。当地を選んだ理由は。

代表執行役社長兼グループCEOの竹内成和さん

 第一に「検査を止めない」という社会的責任を重視し、災害に強いという観点から4年前より場所の選定をしてきた。あきる野の武蔵引田駅周辺は水害や地震に強く、圏央道のインターからも近い。圏央道そのものも高速道路としては最も新しく、安全性、利便性が高い。現在八王子に通っている従業員の通勤の負担も考え、あきる野に決めた。「検査を止めない」という点では、敷地内に非常用発電機や600㌧の貯水槽を設置し、災害時も3日間検査を継続できる設備を備えている。

ーーITを活用した最新の検査体制を導入すると聞いている。

 検査技師の手による検査システムを全面的に刷新し、世界最大規模の全自動化ラインを敷く。運び込まれた検体の箱を開けるところから分析後の検体を倉庫に収めるところまで全て全自動で行うことで、処理能力は従来の約2倍になる。検査を効率化してコスト低減を図るほか、人の手に委ねることで起こりうる検査過誤をなくすという狙いもある。

ーーグループのミッションである「ヘルスケアにおける新しい価値の創造」を象徴する取り組みとして「あきる野プロジェクト」を位置付けている。

 H.U.Bioness Complexはこれまでにない新しい施設。社外の方が訪問した際、見学者がガラス越しに検査の様子を見られるよう設計した。これまでどこか閉鎖的なイメージのあった検査業務をオープンにし、一般の人が検査にもっと近づいてくれるような施設にしたかった。稼働後は小中学生の社会科見学をはじめ見学ツアーを企画していく。

メイン施設の検査ラボ棟とR&D棟

地元に根差した活動検討

ーー最先端の企業が進出することは市のイメージアップにもなる。

 「あきる野で業を営んでいる」ということが大事だと考える。都心から来る人たちにも知ってほしいと、JR立川駅中央線のホームに「ヘルスケアのイノベーション、始まる」のキャッチコピーを入れた看板広告を出した。圏央道からの見え方も意識した。あきる野インターの左手に東京サマーランド、その左斜め先に巨大な建物と「HU」のロゴが見える。遠くからでも目立つように25㍍幅の大きな看板を付けた。

ーー納税以外に企業として地域に貢献したいという思いは。

 もちろん、ある。たとえば社員食堂にはできるだけ地元の食材を使う計画。施設周辺の桜並木を生かしたイベントなども地域住民の方に親しんでいただく一環として企画していきたい。

ーー市民との協同で、市民から検体を採取し研究に役立てるなどのアイデアは。

 医療分野は法的な規制があり、そう簡単に「血液を採るので皆さん集まってください」というわけにはいかない。だが、せっかくあきる野に来たのだから、地元に根差した活動はしていきたい。企業として何ができるか考えたい。

ーー最後に竹内社長について。音楽業界(CBS・ソニー=現ソニー・ミュージックエンタテインメント)の出身で、その後映像、アニメ、映画、放送事業の会社で社内改革に取り組んできた。H.U.グループホールディングスの社長に就任して丸5年。変革は欠かせないキーワードか。

 40歳過ぎからずっと社長業を務めてきた。今の時代、変化しなくて続くものはない。一番大事なのは成長するための風土改革。会社は持続的に成長させていく必要がある。H.U.Bioness Complexは当社の基幹施設。今後はあきる野を中心に患者さんや医療関係の方々への貢献のみならず、ヘルスケア全体の発展に寄与し、その結果として着実に業績を伸ばしていきたい。

ーーありがとうございました。

 

H.U.グループ

 H.U.グループは全国に約50あるラボでヘルスケア関連を含む多くの検査業務を担っており、新型コロナのPCR検査も行っている。

 病院の健康診断や検査で採取した血液、唾液等を当社のラボで分析。日常的に1000種類以上の検査をこなしている。新型コロナ関連では、PCR検査をはじめ、全国主要8空港の検疫所で採用されている高感度抗原定量検査試薬を主要子会社の富士レビオで供給。好評を得ている。