12年間一貫教育の入口 あきる野・菅生学園初等学校校長インタビュー 体験が生む探求心が知識の引き出しと学ぶ楽しさを育む

 あきる野市菅生の菅生学園は、小中高の12年間一貫教育を通して「社会で即戦力になる人材」の育成を目指す。重要なのが12年間の「入口」にあたる初等学校での学びという。同校の下平孝富校長(64)に一貫教育のねらいや初等学校での学びの特徴について聞いた。(聞き手は伊藤寛子)

——ずばり、12年間一貫教育のメリットとは。

 「一つは受験がないこと。世の中の変化が激しい21世紀は、社会から求められる能力が高度化している。一方で、それらの能力を習得するには時間がかかる時代。中学、高校受験に時間と労力を注ぐより、探究型の学びに生かした方が、効率的。同じ建学の精神の下、継続的に取り組むことで学びが深まる良さもある」

——社会に求められる能力とは。

 「土台となるのがコンピューターを使うスキルとコンピューターでデータを分析する能力。その上に未知のものに立ち向かうマインド、他者と協力できるコミュニケーション力、自分の意見を構築し分かりやすく表現し伝える能力が必要となる。当然英語を自在に操る力は必須」

——12年間の入口となる初等学校で重視することは。

 「学ぶ楽しさを知り、その気持ちを無くさせないこと。分かる喜びを知っている子は、学習の難易度が上がって来た時に、ますます楽しくなる。中等教育段階で挫折する子は、その楽しさを知らない場合が多い。私の経験では、その差は学習がより深くなる中学2年くらいから出てくる」

——学ぶ楽しさに気づいてもらうには。

 「体験することだ。体験から生まれる発見、感動、疑問は子どもの探求心をふくらませるからだ。『なぜ?』『もっと知りたい』という気持ちが自ら学ぶ力を育み、知識につながる。体験を通して知識の引き出しをいかに増やしていけるかが大事」

——具体的にはどんな授業か。

 「本校の特色ある授業のひとつ『ゆたか』では、毎週2時間、菅生の自然環境を生かしたさまざまな体験学習に取り組んでいる。例えば小学2年生でタケノコを扱う。まずは、自分で掘り、それをよく観察して絵で表現し食べてみる。次に竹で楽器を作り、音楽の授業の教材にする。『楽しかった』だけで終わらせないところがポイント。『自然が、教科書だ』という環境教育の理念 

が『ゆたか』の土台となっている」

——英語教育に力を入れている。

 「子どもたちが社会に出た時、英語力は不可欠。『東京一、英語力をつける学校』を掲げ、小学1年から英語の授業を週3コマ取り入れる。オンライン英会話や横田基地との交流、TGG(東京グローバルゲートウェイ)での研修・オーストラリア研修など使う機会を重視している。『インプットとアウトプットをバランスよく』がテーマ」

——プログラミングも必須科目の一つ。

 「論理的な思考力を養うのに欠かせない授業だ。これをもとに中等部以降で自分の意見をしっかり持ち、周囲に分かりやすく表現できる力を育てていく」

——教員の能力も問われる。

 「教員は子どもたちを導く存在。昔のように知識を教え込む存在ではない。専門分野はもとより幅広い分野に精通し、自らを高めていかなければいけない」

——校長着任4年目。思い描いた学校づくりができているか。

 「課題山積ながら、目指す方向には進みつつある。まずは各学年30人体制で丁寧に教育し、スタッフの充実とあわせて30人×2クラスに、受け入れる子どもの数を増やすことを目標にしたい」