救助プロの全国組織 あきる野で3年ぶりスタッフ養成講座 要救助者体験ルポ

災害現場に派遣されてきた医師の元へ救出した要救助者(記者)を搬送し、救出の申し送りと医療処置が行われようとしている場面。銀色のシート下が訓練現場。暗闇で障害物が設置された倒壊建物の内部を模したスペース
災害現場に派遣されてきた医師の元へ救出した要救助者(記者)を搬送し、救出の申し送りと医療処置が行われようとしている場面。銀色のシート下が訓練現場。暗闇で障害物が設置された倒壊建物の内部を模したスペース

 消防士、医師など救命救助の専門職が集うNPO法人全国救護活動研究会(八櫛徳二郎代表)のCSRMスタッフ養成講座が6月18、19両日、八櫛代表(44)の自宅敷地内にある東京訓練場(あきる野市牛沼)で3年ぶりに開催された。関東圏を中心に43人が参加。高度な救助訓練に従事した。

 CSRMとは、震災時に発生する狭い空間での救助・救急・医療活動のこと。参加者は2日目の講座終盤で2チームに分かれ、床下に5時間埋もれた状態の負傷者を90分間で救出する訓練に取り組んだ。

 途中、記者は床下の要救助者と入れ替わり、救助される体験をした。つなぎと肘膝のサポーター、安全靴、ヘルメットを身に着け地下通路へ。指示された場所で仰向けに横たわった。狭くて暗い空間。身動きがとれないため周囲の状況が全くわからない。

 この状態で5時間…と想像すると、絶望的な気分になった。そこへ救助隊の声。「大丈夫ですか」「痛くないですか」…盛んに声をかけてくれる。送り込まれた担架に2人がかりで載せられると、少しずつ体が動く。「もうすぐ出ますからね」と救助隊の声。「はい、頭出た」の声でまぶたに光を感じた。歓声と拍手。助け出されたと分かった。

床下から担架で運び出される記者
床下から担架で運び出される記者

 恐怖と絶望から一転、再び生まれたような清々しさを味わった。八櫛代表に感想を伝えると、「驚きと感動がなければ訓練は身に付かない。体験を含めた実践的な災害講習会を地域ごとに検討すべきだ」とした。

 八櫛代表は、自助共助に関する一般向けの防災講習の内容を検討する有識者会議「西多摩減災・防災会議(仮)」に参加し、地域防災リーダー教育センターの立ち上げに向け準備を進めている。

 同NPOは、消防士である八櫛さんが消防仲間とつくった、災害現場で救命率を上げる研究グループを母体に2016年に発足した。会員は約400人。東京訓練場では、毎年ベーシックコースを2回、スタッフ養成コースを1回、計3回の訓練を行ってきたが、コロナ禍で丸2年間、中断していた。(伊藤)