kitokitoが八王子に福祉作業所 木製品の自社製造可能に
ノベルティや木育玩具など木製品の企画・販売を手掛ける一般社団法人kitokito(野口省子代表)はこのほど、八王子市川口町に就労継続支援B型事業所WoodFactory(ウッドファクトリー)を新設した。木製品の扱いに長けた同社に福祉分野のプロが加わったことで、念願の自社工場(福祉木工作業所)開設がかなった。(伊藤)
全ては1本の電話から始まった。昨年3月、のちにウッドファクトリーの施設長となる加藤圭介さん(42、八王子市)から代表の野口さん(52、檜原村)への電話で、「木工の福祉作業所を始めたいが、一緒にやってもらえないか」という内容だった。
加藤さんは日の出町の福祉作業所で20年間、木工事業に従事してきた人物。作業技術の向上や営業に力を入れ、全国平均でひと月当たり1万6000円の利用者工賃を5万円に引き上げた実績を持つ。2人は以前から木材活用のイベントなどを通じて交流があり、創業メンバーの香川武生さん(50、奥多摩町)とも顔見知りだった。
野口さんは、高工賃を今後も実現するために独立を志す加藤さんの心意気に賛同。利用者の意欲を引き出す加藤さんの方針が自社の経営理念「すべてはみんなの〝わくわく〟のために!」に通ずると感じ、かねて自社工場が欲しかったこともあって即座に要請を快諾した。
開設にあたり、新型コロナで減収した事業所が対象の事業再構築補助金を申請。木製品の販売業から福祉事業への業態転換枠で採択された。補助金を活用して施設を建てるだけでなく、複数の木工機器を導入。利用者の障害特性を見極めて仕事を割り振り、作業効率を高めていくという。
同社は都森林組合を退職した野口さんが、同僚だった香川さんを誘って2017年に創業。「木のコンシェルジュ(総合相談窓口係)」として客の相談に乗り、自社で企画・設計までを担って製造は協力事業所に外注していた。福祉作業所の開設により製造も自社でできるようになれば、扱える商品の幅が広がる。
ここ数年、多摩産材やSDGsといった観点から木製品の需要はますます高まっているという。野口さんは「加藤さんからの電話がなければ、こんな展開にはならなかった」と人の縁の妙を楽しみつつ、「障害のある人に働く場を提供しながら、木製品を多くの人に届けたい。同業者や地域の作業所とも連携し、わくわくの輪を広げていきたい」と抱負を語った。
利用者を募集している。野口さん自身が檜原在住なこともあり、送迎コースに秋川〜五日市エリアを加えた。定員20人。作業時間は月曜〜金曜の9時30分〜16時。知的・精神・(身体)に障害を持つ人が対象。食事は1食600円で提供予定。無料送迎あり。Aコースは武蔵五日市駅〜引田駅〜秋川駅、Bコースは西八王子駅〜高尾駅。問い合わせは042(659)2394まで。