西多摩と南・北多摩の人をつなげたい——。そんな想いから、西多摩の地域メディア「西の風」と立川を拠点にする英字サイト「ミータイム」は読者の皆さんの生活圏内である南・北多摩の魅力的な女性たちの取り組みを紹介する連載をお届けします。月1回のペースで続けていきます。
パク・ヘジョンさん (韓国語講師・大学講師/国立市在住)

韓国語 思考を変える言語体験
国立駅からほど近い一室で、2017年から韓国語教室を開いている。生徒は学生から定年後の趣味として通う人まで年齢層も関心もさまざま。言葉を入口に韓国の文化や社会に対する理解が広がっていく様を長年見てきた。「ハングルを読めるようになると韓国のニュースやSNSの内容がわかるようになり、学ぶ前とは違った視点で物事を見れるようになる。これまで気づかなかった価値観や感情に触れると世界を理解する手がかりが増えて思考も深まっていく」と話す。
生徒の中には、韓国ドラマが好きで通い始めた人もいれば、学びを通して社会問題に関心を持つようになった人もいる。時折、生徒との会話で「伝統だから」「昔からこうだから」という言葉が出てきたときは、「いつ、誰が、なぜはじめ、定着し当たり前になっていることなのか」とゆっくり問いかけるようにしている。ルールも文化も人が作り上げたもの。だからこそ、変えていけると考えている。
初来日は1994年。留学中の姉を訪ねて東京に来た。「高円寺で視覚障がいのある人が自然に歩いているのを見て驚いた。当時の韓国では、障がいのある人の姿をまちであまり見かけられなかった。社会文化の違いに衝撃を受け、日本の福祉や教育制度に関心を持つようになった」
埼玉大学に進学し、障がい児教育を勉強しながら介助のボランティアをしたとき、寝たきりの若い女性の生理に驚いた。障がいのある人の「性」に対する先入観と偏見に気づき、自分のセクシュアリティに問いかけた。一橋大学院で社会学を学び、障がい児·者の性教育、韓国と日本における性教育の比較などについて研究をした。「セクシュアリティ形成には、その社会の文化や教育などが深くかかわる」と話す。
教室には、ハングルのテキストだけでなく、障がい児教育やジェンダーに関する本も多く並ぶ。性や生理といった話題が、支援や福祉の文脈では語られることが少なく、その「語られなさ」が彼らの尊厳や主体性を奪っているように感じている。
国立は、心が落ち着く場所であり第二の故郷だ。大学通りの並木道を歩くのが好きで、季節の移ろいを感じる時間が日常にある。「風の強い日には、木々が守ってくれているように感じたり、今日はどんなことがあったの?と優しく語りかけてくれているようにも感じるから夜遅くまで仕事をした帰り道も楽しい」
住んでみたい
働いてみたい
遊びに行きたい
