西多摩の地域メディア「西の風」と立川を拠点にする英字サイト「ミータイム」が、多摩地域の魅力的な女性たちの取り組みを紹介する連載です。
キム・スンボク(金承福)さん 神保町、韓国書籍専門のブックカフェ「チェッコリ」オーナー

世界で評価される 韓国文学を日本へ
韓国の現代文学や詩、社会科学など幅広いジャンルを手がける出版社「クオン(Cuon)」代表。創業後、初めて邦訳出版した作品は2011年刊行の ハン・ガン 著『菜食主義者』(きむふな訳)だった。本書が昨年ノーベル文学賞を受賞したことで新たな読者層が広がり、日本全国の書店では韓国文学コーナーの存在感が増している。年1回開催されるKブックフェスティバルには、昨年、日本の出版社45社、韓国の出版社12社が参加し、年齢や立場を超えた人々が集い、2日間で延べ3700人が来場した。
翻訳家志望者が訪ねてくることも多い。若い人にはチャンスをあげたいが、「何かを始めるのに許可や契約はいらない。まずは自分の好きな作品を選び、自由に訳してみて」と話す。韓国で短期間でも生活し、言葉や文化の中に身を置いた人ほど、「翻訳したい」と言う前にすでに翻訳をしていて実際に翻訳家になった人が多くいる。「画家も同じ。描きたい人は、You Tubeで描き方を検索する前に文房具屋でスケッチブックを買う。やりたいことは、調べるものではなく始めるもの」と語る。
東京とソウルを行き来し、作家や翻訳者と接するなかで、行動することを大切にしてきた。実際に動き、挑戦する姿は相手をも動かす。その実感は、昨年末に上梓したエッセイ『本を作るのも楽しいですが、売るのはもっと楽しいです。』(岩波書店)にも綴られている。韓日をつなぐ架け橋として奔走してきた日々を通じて、本を作る喜びと、読者に届けることの楽しさを伝える。
行動を重んじ、人との縁を大切にする姿勢は、1991年の来日直後の体験にも通じている。ソウル芸術大学で現代詩を専攻後、日本大学で文芸を学んだ。多摩地域は、日本の家庭を初めて体験した町だ。当時世話になった演劇家の家族に迎えられ、子どもたちと人生で初めてアイススケートをした。
仕事は苦役ではなく、自ら選び取り、楽しむもの。没入すればするほど楽しくなると感じている。人生は決して長くないから、遠回りはしたくないと語る。その一貫した前向きな姿勢は、世代を超えた人たちを惹きつけ、厚い信頼へとつながっている。
住んでみたい
働いてみたい
遊びに行きたい
